本イベントで特に注目度が高かったのは、紀伊國屋書店として初の試みとなる「ミステリーイベント」だ。全634枚のチケットのうち、ミステリーツアー付きは234枚のみで、ノーマル券と比較して早々に売り切れたという。
同イベントは、音声ガイドの指示に従って書店内を移動し、約90〜120分かけて物語の結末を導き出す体験型企画だ。売り場に置かれている検索機を操作したり、一面が暗闇に包まれたフロアを歩いたり、書店ならではのギミックも多く取り入れた。
「閉館後の書店を巨大な劇場と捉え、参加者が探偵として館内を動き回る『新しい読書体験』を創出したいという思いから企画がスタートしました。閉店後だからこそできる体験を多く取り入れ、20〜60代ぐらいまでの幅広い層に参加いただき、大変好評でした」(安藤氏)
筆者も実際にイベントを体験した。スマートフォンで専用サイトにアクセスし、イヤフォンで音声を聞きながら館内を巡っていく。ストーリーには選択肢が多くあり、何を選ぶかによってストーリー展開が変化していくのも醍醐味だ。
筆者は見どころだけを凝縮して体験したため深い考察はできなかったが、所々で登場する演出では非日常感を味わえた。特に、真っ暗なフロアを息をひそめて歩く経験は印象的だった。
参加者の約7割が1人で、残りが2人以上のグループだったという。「読書は本来、1人で没頭する贅沢(ぜいたく)な時間だと思います。そのため、本ツアーでもイヤフォンで音声ガイドに導かれながら1人で物語に没入する『読書時間』を提供できたことは、良かったと感じています」と安藤氏は話した。
ミステリーイベントのチケットを購入できなかった人も多くいたことから、第2弾のリクエストが多く寄せられているという。なぜ、これほどの反響を得られているのか。
「書店の空間そのものに強い魅力があるから、ではないでしょうか。本棚に整然と並ぶ本の圧倒的な存在感、紙の手触りや匂い、知的で心を落ち着かせてくれる雰囲気。そうした書店特有の空気は、AIやネットが当たり前になった現代だからこそ、より大きな価値を持つと感じます。そこに『ミステリー』の要素を掛け合わせた新しさやおもしろさが、多くの方の興味・関心を引きつけているのではないかと思います」(安藤氏)
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