星氏は、キノフェスをこう振り返る。
「イベント自体は成功だと評価しています。リアル書店の価値をお客さまに再認識してもらえたことが最大の収穫でした。新しいお客さまがたくさん訪れ、イベントをおもしろがってくれて、多くの本を購入してくれた。これは、当社にとって自信になりました」(星氏)
現場の書店員も手応えを感じたという。例えば、ライブトークに登壇したある書店員は、参加者を売り場に案内し、直接おすすめの本を紹介したところ、多くの購入につながった。普段は顧客に直接本を勧めることはないため、新たなやりがいを得られたそうだ。
告知後のSNSでは、「ゲストを見て購入をやめた」「プログラムはいらないから、書店に寝袋を持ち込んで泊まりたい」などさまざまな反応があったが、「他の書店ではやっていないことをやりたい」という思いがあったそうだ。結果的にチケットは即完売し、参加者の反応も上々だった。
この成功を踏まえ、すでに第2弾に向けたアイデアも生まれている。
「今回は幅広いゲストにより新規層を呼び込めたのは良かったのですが、次は紀伊國屋書店らしいゲストを増やせたらと考えています。また、作品の作り手が直接販売する『文学フリマ』もやってみたいですし、たくさんの『サイン本』を用意するのもいいかなと。第2弾は来年開催を検討していますが、それよりも前に若いお客さん向けに短縮版を企画するのもアリかもしれません」(星氏)
最後に、書店を取り巻く昨今の厳しい環境に対する紀伊國屋書店の見解を尋ねた。
「書店事業を存続させるうえで、雑貨など書籍以外の売り場を増やす、あるいは本を売ることにこだわるという2つの方向性で各社の見解が分かれるのかなと思います。当社は、本がたくさんある空間に価値があるという考えのもと、本の売り場を減らさずに、本を売ることで収益を上げていく方針です。
そのためには、書店に来店する人を増やす必要があります。だからこそ、新宿本店では年間300件以上のイベントや今回のようなフェスも継続していきます。ネットでも買える中で、“あえて書店に行く理由”を作っていくのが私たちの仕事だと考えています」(星氏)
さらに、星氏は「欧米では若年層が紙の本に回帰している傾向があり、いずれこの流れが日本にも到来するだろう」と前向きな予測にも触れた。第1弾で得られた教訓を生かし、キノフェスはまだまだ進化しそうだ。
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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