専務の退職後、自らの意思を社員に伝える場がない事実に直面した。これも、今まで社内コミュニケーションの全てを専務任せにしていたためだ。ここから、「会社をどうしていきたいかを直接社員に話せる場が必要だ」と考えた。
そこで目をつけたのが、1日1回、社員全員が顔を合わせる「朝礼」だ。当時は安全注意を促す程度の1〜2分で終わる形骸化したものだったが、この場を意思共有のために活用しようと思い立った。
とはいえ、朝礼をどのように改革したらいいかは分からなかった。「書籍やYouTubeなどを手当たり次第に見て、1年ほどの試行錯誤を経て現在の形に行き着いた」と話す。
行き着いたのは「承認」だった。清松氏は承認を「相手を単に褒めること」ではなく、「運動会で子どもを撮る父親のカメラのように、結果がどうあれ相手をありのままに受け止め、気にかけること」と話す。
「例えば、自分の子どもが徒競争で最下位だったときに、『何で最下位だったんだ』と怒る親はあまりいませんよね。同じように、メンバーのことを気にかけ、理解しようとする姿勢こそが承認だと思いました」
具体的な取り組みとして、ミスやヒヤリハットの事例を共有した従業員に、全員が「ありがとう」と学びの御礼を伝える「ええじゃないか運動」、社員が当番制で他者の良いところを発表し、全員でたたえる「いいね運動」、朝礼前に清松氏が部屋の入り口に立ち全員とハイタッチする「ハイタッチ運動」などを開始した。
清松氏は「ええじゃないか運動」の事例として、常習的に遅刻を繰り返していたある社員の変化を以下のように話した。
「以前は、遅刻するたびに怒鳴っていたんです。ただ、ええじゃないか運動を始めてから、『遅れても会社に来てくれてありがとう。せーの、いいね!』と社員全員で肯定し続けました。その結果、その社員は3日目から誰よりも早く出社し、掃除などをするようになったんです。気まずさからというよりも、みんなから注目されることが楽しくなって、遅刻しなくなったのだと思います」
こうした活動を定着させるにあたり、清松氏は「経営者自らが楽しげにやること」に加え、まずは2人の仲間を作ることが大切だと話す。
「最初に飛び込む人、つまりファーストペンギンが1人だけでは、周囲は動かない。同じ思いを持って取り組んでくれる人をあと2人見つけて、3人で続けていると、周囲も『おもしろそうだな』と感じ始め、人が集まり、チームになっていきます」
実際、清松氏と一緒に朝会で新しい取り組みを率先してやる「オピニオンリーダー」という役割を社内メンバーに与え、巻き込むことで、最初は遠巻きに見ていた社員も次第に乗ってくるような空気感を作り出していった。
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