今回話を聞いたカメラマンや記者が指摘した、「避けるべき装い」と、その背景にある「現場の論理」を紹介する。
【男性の場合】
上場企業のIR情報などの会見でも、取締役が着用している姿を散見するが、謝罪の場では厳禁だ。ボタンダウンはもともとポロ競技由来のスポーツ・カジュアルな服だ。冠婚葬祭などの格の高いビジネスフォーマルでは着用しないのが本来のルールである。
謝罪の場にカジュアルな要素を持ち込むことは、現場の記者に「この場を軽んじている」という攻撃材料を、自ら提供するようなものだ。
プルデンシャルの事例で集中砲火を浴びたのがこれだ。カフスボタンは、袖口を飾る宝飾品とみなされる。謝罪の場では「身を削るような思い」を伝える必要があるが、フラッシュを浴びて光るその一点は、おしゃれを楽しむ心の余裕や、贅沢な暮らしを連想させてしまう。
確かに格調高いが、謝罪の場では「特別な地位にいる」という特権意識や権威を誇示しているように映る。必要なのは「謙虚さ」と、相手に対して身を低くする姿勢である。
【女性の場合】
アクセサリーはゴールドよりも、控えめなシルバーやプラチナの方が落ち着きを感じさせる。ゴールドは華やかさや富の象徴になりやすいため、謝罪の場ではノイズになる。
襟元や袖口にフリルがあるものは、「浮ついた印象」につながる。ある記者は「少し華やかさがある方がいいなんて、謝罪会見では大嘘。枯れているくらいがちょうどいい」と断言していた。
例えば男性のシャツの襟にはレギュラー、セミワイド、ボタンダウンなど多くの選択肢が存在する。さらにネクタイに目を向ければ、ストライプや小紋といった柄の一つ一つにまで、語られざる「意味」や「格」が潜んでいるという。
これほどまでに「やってはいけない」の地雷が埋まり、細かなマナーが網の目のように張り巡らされていれば、何を選べばいいのか分からなくなるのも無理はない。専門家ですら意見が分かれるこの迷宮で、一分一秒を争う経営層が立ち往生する時間は残されていない。
そんな時、最も賢明で確実な策は、独自のこだわりを一度捨て、すでに成功を収めた先例をそのまま「型」として模倣することだ。
例えば、男性ならKDDIの高橋誠前社長。2022年の通信障害という極限の状況下で行われた会見で、自らを誇示することのない装いを選んだ。清潔感に溢れ、それでいて主張を排した彼のスタイルは、発する言葉の誠実さを濁らせることなく世間に届けた。
女性であれば、DeNAの南場智子会長。彼女の謝罪会見の場での余計な装飾を削ぎ落とした姿は、お手本だと考える。2016年12月、キュレーションサイト問題に関する記者会見で、守安功社長とともに壇上に立った南場会長の装いは過度な演出を排した姿勢そのものだった。
黒に近い濃紺のシンプルなスーツに、白のインナー。アクセサリーは控えめな銀色で統一され、メイクも色味を抑えたナチュラルなトーンでまとめられていた。説明責任を果たす場にふさわしい、抑制された表現として機能していたと感じる。
装いは想像以上に多くを語る。特に謝罪会見という場では、その力が露わになる。論理的に選ばれた服装は、意図を精密に伝える手段になりうる。つまり、謝罪会見の場で有効な戦略とは、「誤解されない外見」を心がけること。内容を際立たせたいなら、まず外見から雑音を消す。過剰な主張を削ぎ落とし、実績ある「型」に倣う。
謝罪の場における装いとは、「身だしなみ」ではない。「コミュニケーション戦略」だ。
【イベント情報】AI時代のコミュニケーション戦略
AI時代に求められる「情報を共有し、信頼を築くコミュニケーション力」について紹介します。旭鉄工ではSlackとAI製造部長を活用し、現場の情報やノウハウを生成AIで共有・活用。暗黙知の形式知化を進め、AIと人が対話しながら思考を磨く仕組みにより、全員が自律的に学び、成果を生み出す組織へと進化しています。
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