白川: CollaboViewの価格設定は、最初はかなり苦労しました。というのも、今ある作業を効率化するというより、「本来やるべきだけど、できていない業務」に対しての代替なんですよね。これまで存在していなかった“新しい業務”に対するソリューションだと、単純に「いくらコストが削減できる」「どれだけ売り上げが上がる」といった形では価値を定量化しにくい。
例えば、生産設備の自営保守を前提とした工場設備の予知保全でいうと「見回りによる変化の把握」を本当はやらないといけない。しかし、そもそも変化を把握できる人材がいない。じゃあ、それを本気でやろうとしたら、どれだけのコストがかかるのか――そこを一つの起点にしました。
高橋: 「今ないけど、本来必要なコスト」を前提にした比較、ということですね。
白川: そうです。やるとしたらこのくらいのコスト増は避けられないですよね、と。
その“やるべき前提”を示したうえで、「われわれのソリューションであれば、ここまでコストを抑えられますよ」と伝える。これは、今ある業務の効率化とはまた違う、「実現すべき理想との比較」なんです。
高橋: ある意味で、仮想のベースラインを設定するようなアプローチですね。ゼロからイチの価値を示す、というか。
白川: 重要なのが「かけ算の価値」です。IoTがイマイチ盛り上がらなかったのは、それ単品だとできることが少なかったからだと思っています。
AIが登場した今、IoTとAIを連携させて相関を分析することを1つの価値として提示できる企業は、現状まだまだ少ないと思っています。
高橋: “1+1が3になる”という、統合価値の提示ですね。
白川: この「かけ合わせで生まれる価値」をどう定量化するかが今回の挑戦でしたし、そこをうまく整理できたことで、営業現場でも語りやすくなったと思います。最初は確かに大変でしたが、価値の出発点を「やるべき理想」から描いたことが、結果的には説得力あるプライシングにつながったと思っています。
白川: 意外に思われることが多いですが、CollaboViewでは同じ工場向けでも大規模と中小規模で価格を変えています。
高橋: 日本だと「同じものは同じ価格で売るべき」という価値観が根強くありますよね。
白川: 例えば同じ機能でも、半導体製造系と組立系では感じる価値や導入のインパクトが全く違います。それは歩留まりや収益率が大きく異なるからです。同じ機能でもさまざまな市場に変化させて提供するサービスの価値は、おのずと異なります。
高橋: 「誰にどう届けるか」によって、価格は変わっていい。むしろ変えるべきということですよね。
白川: 誰にどの価格で届けるかを考えていくと、自然と「どこから事業を攻めていくか」という優先順位も見えてきます。
私たちも最初は、クリーンルームを持つ工場領域に集中しました。事業の基盤を固めてから、徐々に社会的意義の高い領域に広げていく、という順番です。
高橋: 価格戦略をきちんと設計すると、ターゲット選定やリソース配分の判断まで一貫して整理されていくんですね。
白川: プライシングというのは、単なる価格の話ではなく、事業戦略そのものであり、価値のブラッシュアップや見直しも随時実施していくものだと思います。
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