この構造が行き着く先は明白だ。帝国データバンクの調査によると、2025年の人手不足関連倒産は427件に達し、3年連続で過去最多を更新した。年間400件超えは初めてのことだ。
業種別に見ると、建設業が113件で初めて100件を突破し、物流業も52件と過去最多を記録した。いずれも2024年4月に時間外労働の上限規制が適用された業種であり「働き方改革」が図らずも人手不足の加速装置として機能した格好だ。
老人福祉、労働者派遣、美容、警備業など、倒産した業種の多くは労働集約型に分類される産業だ。
注目すべきは、倒産企業の77%が従業員10人未満の小規模事業者だという事実である。
社員が5人の町工場では、1人の退職が総工数20%の喪失を意味する。人員を補充できなければ受注を断らざるを得ず、売り上げが落ち、残った社員の負荷が増し、さらなる離職を招く。負のスパイラルは、一度回り始めると止めることが極めて難しい。
もっとも、全ての中小企業が追い込まれているわけではない。中小企業間でも明確な「勝ち組」と「負け組」の二極化が進んでいる。
独自の技術や特許を持ち、取引先への価格交渉力がある企業は、大企業並みの4〜5%の賃上げを実施しながら人材を囲い込んでいる。
分かれ目は「価格転嫁力」だ。自社の製品やサービスに替えが効かない付加価値があるかどうかにかかっている。
取引先に対して「値上げしなければ供給を止める」と言える交渉力があるかどうか。結局のところ「賃上げできるかどうか」は「独自の競争優位性があるか」の裏返しにすぎない。
3月18日には春闘の集中回答日を迎え、大手の賃上げ動向がより明確になるだろう。
その結果は昨年と同様、大企業を中心に過去最高の賃上げ水準を更新することが予想される。メディアにおいては「賃金と物価の好循環」という耳ざわりの良い言葉が並ぶ公算が高い。
しかし、2026年度に賃上げ率5%以上を予定する企業は35.5%と前年度実績から低下しており、足元ではすでに息切れの兆候も見える。また、2025年の実質賃金は前年比マイナス1.3%と、名目賃金の伸びを物価上昇が打ち消しているという現実もある。
2026年春闘で本当に焦点となっているのは、単なる賃上げではない。
スマートフォン一つで隣の会社の給料が分かる時代において、経営者の自己犠牲による場当たり的な賃上げは、もはや限界を迎えているわけだ。
中小企業においては、AIなどによる生産性の向上がない限り、競争優位性が乏しく、適正な賃上げ原資を確保できない企業から順に、市場から退場を余儀なくされるだろう。2026年は経済における“新陳代謝”という名の選別が一層加速する局面に入っているといっても過言ではない。
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