観光業に人が来ない理由 あるホテルが「給料+1万円」で見えた現実観光ビジネス(2/2 ページ)

» 2026年03月22日 08時00分 公開
[内藤英賢ITmedia]
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観光ビジネス』(内藤英賢/クロスメディア・パブリッシング)

 あるホテルでは、次のような取組みをされていました。県内の産業別賃金を算出して、その賃金を+1万円上回るように最低給与を引き上げたところ、何と応募が激増したというのです。今までとの違いは「宿泊業以外からの応募が増えた」という点です。ミクロな事例ですが、これこそが「稼げる産業に人が移動する」という典型なのではないでしょうか。

 そのホテルの役員の方が「内藤さん。結局、人間は条件面なんですねえ」としみじみ語っていたことが印象的です。

 あるいは、こんな事例も観測できています。多店舗で旅館を展開されている企業が新規出店で募集を出したところ、周りの旅館からの流入が起きたと。理由はやはりそのエリアでは圧倒的な好条件での募集内容となっていたことです。これもまた同じ仕事をするのであれば、より給与の高い所に流れるという自然な動きだったのだと思われます。

 これらのことは何を意味するのでしょうか? シンプルに「人を集めたければ条件をよくせよ」というごくごく当たり前の話です。そして条件をよくするためには、前述のように労働生産性を高めて、経営者がそれを人件費に還流するという流れが必要になります。大した秘密ではなく恐縮ですが、これがやはり事実だということを目の当たりにしてきましたので、あえて記載をしました。

 これは移住や東京一極集中から地方へという話の中でも真理となります。 「まずは稼げる産業、稼げる企業をつくること」なのです。これが身もふたもないことですが、真理なのです。

 1868年以降、日本の人口の一番多かった都市はご存じでしょうか? 新潟県だったのです。

 それはシンプルに新潟が生産と物流の拠点であり、要はそこに産業があったから人が集積したということです。

 とある漁師村の平均年収は800万円を超えるそうです。そうなると、廃れるどころか後継者もしっかりちゃっかり現れて、平均年齢が若返っているそうです。つまり、そういうことなんです。

 そのためにはくどいようですが「稼げる観光」を追求しないといけません。そしてありがたいことに今、観光は稼げる産業になってきているということです。ですが、多くの観光ビジネスでまだまだそうはなっていません。

内藤英賢(ないとう・ひでさと):

合同会社Local Story代表

 早稲田大学政治経済学部卒業後、三菱UFJ銀行に入行。退職して、吉本興業の養成所(NSC)を経て約3年半芸人として活動。その後、観光業界へ転身し、株式会社アビリブに入社。株式会社プライムコンセプトの創業にも参画し、取締役副社長COOなどを歴任。宿泊施設や観光地のマーケティング・ブランディングを中心に300以上のプロジェクトを手がける。現在は地域活性化やDMO支援、講演活動など幅広く活躍している。


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