ここまで上司側の問題を述べてきた。しかし、公平に言えば、部下側にも問題があるケースは多い。
仕事を振られると露骨に嫌な顔をする。指摘を受けると不機嫌になる。やり直しを求めると態度が変わる。こうした部下の振る舞いが、上司の回避行動を助長していると言っていい。
近年「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」という言葉が注目されている。不機嫌な態度で周囲を萎縮(いしゅく)させ、コミュニケーションをさまたげる行為だ。ため息をつく、返事をしない、あからさまに表情を曇らせる――。こうした態度は、たとえ本人に悪意がなくても、周囲に大きなストレスを与える。
ドイツの文豪ゲーテは、
「人間の最大の罪は不機嫌である」
という言葉を残している。不機嫌は伝染する。ひとりの不機嫌が、チーム全体の空気を重くし、コミュニケーションの量と質を低下させる。上司が「機嫌を損ねるくらいなら、自分でやるよ」と思ってしまう背景には、この不機嫌の“伝染力”がある。
だからこそ、上司は不機嫌な態度そのものについても指導すべきだ。
「仕事を振られて嫌な顔をするのは、周囲に悪影響を与えている」
「不機嫌な態度はハラスメントと認識される時代だ」
こうしたフィードバックを避けてはいけない。本人も気付いていないことが多いからだ。私も誰かの話を聴く際、いつも眉間にしわを寄せていた。私自身、全く気付かなかったが、ある経営者から
「そうやって、眉間にしわを寄せて話を聴くのはやめたほうがいいですよ」
と指摘され、はじめて自覚した。驚いた私は部下たちに尋ねてみたのだが、
「はい。いつも眉間にしわが寄っています」
「私の話を聞くのが、面倒なのかな、と思っていました」
という反応が返ってくるではないか。妻にも聞いてみると、
「10年前から、ずっとそう」
と言われ、ショックだった。誰かに指摘されない限り、気づかないことは多い。本人が自覚することなく、そのまま5年も10年も経ってしまうこともある。
フキハラが世間一般にハラスメントとして認識されている以上、「不機嫌な態度」を放置すること自体がマネジメントの怠慢とも言える。部下の機嫌を取ることがマネジメントではない。不機嫌な態度が組織にとって問題であると、正面から伝えること。それもまたマネジャーの責任なのだ。
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