「冷却技術は日本企業の強みに」 三菱商事発データセンター企業が印西市で狙う、AIインフラの覇権

» 2026年04月09日 14時40分 公開
[ITmedia]

本記事は、MCデジタル・リアルティが4月8日に実施したメディア向けラウンドテーブルの質疑応答の内容を、一部抜粋して紹介する。


 三菱商事と、データセンター大手の米Digital Realtyとの合弁会社MCデジタル・リアルティ(以下、MCDR)は4月8日、千葉県印西市に新たなデータセンターを開業した。

参考:「データセンター」の中ってどうなってるの? 潜入して分かった、生成AIを支える「冷却技術の進化」

 同社は世界30カ国以上、300カ所以上のデータセンターを展開するDigital Realtyの知見と、三菱商事の不動産、インフラ投資の知見や顧客網を活用し、国内で9棟、全体で受電容量約200MW(メガワット)規模のデータセンターを運用している。

 新たに公開されたデータセンター「NRT14」は、AI時代のニーズに特化した設計が特徴だ。NVIDIAの最新GPUサーバが安定稼働するための液体冷却基準を満たし、同社の認証を取得。空冷と液冷のハイブリッド環境を備えている。

MCデジタル・リアルティは4月8日、千葉県印西市に新たなデータセンターを開業した(提供:MCデジタル・リアルティ)

 MCDRは印西市に3棟のデータセンターを構える。そのうちの1つ「NRT12」に、最適なAIインフラ導入を支援する検証施設「MCデジタル・リアルティ イノベーション ラボ」(DRIL)を開設した。

 実環境に即した条件下で電力密度や冷却戦略を検証できる環境を整備。施設では液冷却に対応する高密度型サーバを無料で提供しており、企業のDXを加速するためのコアとなるイノベーションが生まれることに期待を寄せる。

 印西市には、データセンターが複数立ち並ぶ。国内だけでなく、世界のデータセンター事情を知る同社は、日本市場をどのように見ているのか。4月8日に行われたメディア向けラウンドテーブルでは、MCDR 山下康平CEO、Digital Realty クリス・シャープCTO(最高技術責任者)、マネージングディレクター アジア太平洋地域統括 セリーン・ナー氏がデータセンターの変遷と日本企業の展望を語った。

MCDR山下社長「冷却技術は日本企業の強みになるのではないか」

データセンターを取り巻く変化

シャープ氏: AIはもはや付加価値ではなく、成功に不可欠な要素だ。インフラの役割は極めて重要であり、当社はハイパースケール(メガクラウド事業者向けの巨大データセンター)のみならず、エンタープライズ企業向けのデータセンター環境も提供できるよう、継続的に取り組んでいる。

山下CEO: 生成AIの急速な普及を背景に、データセンターでは高度な処理性能を要するAIワークロード(AIの学習や推論における処理)に対応しながら、高い運用効率と安定性、信頼性を両立できるインフラが求められている。電力容量や冷却方式、運用効率をいかに最適なバランスで構成するかが鍵となる。

冷却技術が高度化

シャープ氏: サーバラック当たり数十kW(キロワット)を超えると、従来の空冷だけでは対応できなくなる。液冷・空冷のハイブリッド環境が求められる。

 国内の金融機関などは、従来型のデータセンターを保有しているケースも多い。しかし、生成AIの処理などをする場合、より高度な設備が必要となり、企業が持つ既存のデータセンターだけでは対応が難しいことも多い。

 従来型のワークロードは自社データセンターで運用しつつ、高密度・高負荷なAIワークロードについてはコロケーション環境(企業やクラウドサービス事業者に、セキュリティ水準の高いデータセンターのサーバラックを1ラック単位で貸し出すサービス)を活用する、という形で使い分けが生まれることを見込んでいる。

企業やクラウドサービス事業者に、セキュリティ水準の高いデータセンターのサーバラックを1ラック単位で貸し出す「コロケーションサービス」を展開している。写真はMCデジタル・リアルティ イノベーション ラボに並ぶサーバラック(編集部撮影)

山下CEO: 新センターでは、日本企業と海外企業の冷却技術両方を提供している。冷却技術は、日本企業の強みの一つになると感じている。1社だけで完結できるものでなく、複数のベンダー企業がコラボレーションして1つのエコシステムが出来上がるのだと考えている。

「MCデジタル・リアルティ イノベーション ラボ」では、冷却のさまざまな冷却技術を検証している。写真は液冷を使用しているサーバラック(編集部撮影)

製造業やロボティクス分野に寄せられる期待

「リアルワールドモデル」を日本企業の強みに

ナー氏: 日本は魅力的なデータセンター市場の上位3位にランクインしている。アジア太平洋地域の主要な金融・技術のハブであり、国内企業だけでなく、多国籍企業が日本で成功したいと考えている。

シャープ氏: 日本企業は長年にわたり、製造業やロボティクス分野で世界をリードしている。現在の言語処理中心のAIモデルから、今後はロボティクスを基盤とした「リアルワールドモデル」へと移行していくことが予想されており、日本企業の活躍に期待が寄せられている。

大規模センターを一括建設ではなく、着実に拡張

山下CEO: 当社は2017年の設立以来、継続的にデータセンターを建設している。一気に大規模なセンターを建設する戦略ではなく、土地や電力といったハードルを一つ一つクリアしながら着実に建設を続けてきた。今後、NRTキャンパス、KIXキャンパス(大阪府茨木市・箕面市)の拡張も検討しており、数年のうちに現在(200MW規模)の倍に増やしたい。

参考:「データセンター」の中ってどうなってるの? 潜入して分かった、生成AIを支える「冷却技術の進化」

MCDR 山下康平CEO(編集部撮影)

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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