ハラールに対応する飲食店は「ハラール認証」を取得することが多いが、青木氏はあえて違う選択をした。
「ハラール認証を取得している店は、アルコールを提供してはいけないなど制約が多いです。私たちは世界中の人たちに来てもらいたくてハラール対応をするのであって、ハラールの専門店になりたいわけではありません。目的は食のダイバーシティの実現です。そのため『ムスリムフレンドリー』の考えを取り入れることにしました」
ムスリムフレンドリーとは、ハラールに対応した食材や調理工程を取っているという表明だ。大久手山本屋は、メニューにこのポリシーを掲載している。それを読んで「食べられない」といったムスリムはこれまで1人もいないという。
一方、ベジタリアン・ヴィーガン対応は、どのように進めたのだろうか。
「『ベジタリアン・ヴィーガン』と聞くと海外の考えで遠く感じられますが、実際の対応は、だしをかつおからしいたけに変えるだけです。精進料理と同じ発想で、そのことを職人にも伝えていきました」
相手が理解しやすく、伝わる形で示す。翻訳が青木氏の持ち味なのだろう。職人たちも精進料理と聞くと、抵抗感なく取り組んでくれた。しかし、だしを変えるという点では紆余曲折もあった。
「職人たちは長年作り続けてきたかつおだしベースのみそ煮込みうどんを100点だと考えています。そのため、しいたけだしでもその味に近づけようとし、試行錯誤を重ねていました。しかし、本来目指すべきは、しいたけのだしでおいしい1杯を完成させることです」
そこで青木氏が提案したのは、実際にベジタリアン・ヴィーガンの人たちに試食してもらい、意見を聞くことだった。複数の味を確かめてもらい、一番人気を採用した。
ハラールとベジタリアン・ヴィーガン対応を始めて7年ほどが経つ。名古屋の本店には1日に20〜30人ほど、ムスリムやベジタリアン・ヴィーガンの観光客が来店する。Googleマップでは、利用者の言語設定に応じて同じ言語のレビューが上位に表示されやすく、母国語の口コミを見て来店するケースが多いという。
「売り上げへの効果は5%ほどです。しかし、それ以上に名古屋に来た観光客がみそ煮込みうどんを体験して発信してくれる潜在的な効果は大きいと思っています」
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