東京を選ばず、海外に4店舗展開 名古屋の老舗「みそ煮込みうどん店」はなぜ受け入れられた?(1/4 ページ)

» 2026年04月25日 07時30分 公開
[久保佳那ITmedia]

 1925年に名古屋で創業したみそ煮込みうどん店「大久手山本屋」。現在は本店の名古屋に加え、香港(2店舗)、韓国、中国へと進出し、6月には台湾への出店も控える。一方で、東京や大阪といった国内の主要都市には出店していない。

 本店では通常メニューに加え、ハラールやベジタリアン・ヴィーガン対応のみそ煮込みうどんも提供し、世界各地から観光客が訪れる。なぜ、名古屋のローカルな食文化が海外で受け入れられたのか。なぜ、出店先に海外を選んだのか。五代目の青木裕典氏に取材した。

大久手山本屋の五代目 青木裕典氏(画像:筆者撮影)

「このままでは、じり貧になる」 五代目はどんな手を打ったのか

 青木氏が家業に入った2013年頃、大久手山本屋の経営状態は芳しくなかったという。

 「大久手山本屋は、創業時から名古屋だけでみそ煮込みうどん店を営んできました。しかし、これから100年続く事業にしていこうと考えたときに、現状のやり方ではじり貧になりそうだと思いました。事業を継続していくには、食べられる場所を増やすなど、売り上げを伸ばす方法考える必要があります。場所については東京や大阪という選択肢もありましたが、みそ煮込みうどんというニッチな食べ物だからこそ、海外進出も面白そうだと思いました」

 「海外の人にもみそ煮込みうどんを食べてもらいたい」。そう青木氏が思ったのは、大学院時代に働いていた、ITベンチャー企業での出来事が強く印象に残っていたからだ。

 その会社は建設機械のBtoBプラットフォームを開発しており、青木氏は機械のオークションに立ち会ったことがあった。さまざまな国からの参加者の中に、中東から来日していたムスリム(イスラム教徒)のバイヤーもいた。

 昼食には5種類ほどの弁当が用意されたが、彼らは毎日インドカレーを食べていた。その理由を尋ねると、「ハラール対応しているか分からない食事は食べられない」という答えが返ってきた。ハラールとはアラビア語で「許されたもの・行為」を意味し、豚肉および豚由来の食材やアルコールを使わないことなどが求められる。

 「知識として知ってはいたものの、豚肉を食べない、アルコールを飲まない方々を初めて目にして、食生活や文化の違いを感じました」

 また、青木氏は学生時代にバックパッカーとして海外を旅していた経験を持つ。ヒップホップが好きで各地のクラブに足を運び、そこで知り合った友人たちの中にはベジタリアンやヴィーガンもいた。そんな経験から「あの人たちにも、みそ煮込みうどんを食べてほしい」と思うのは自然なことだった。

 しかし、当時の大久手山本屋は経営基盤を固めることが先決だった。まずは土産商品として「自宅で食べられるみそ煮込みうどん」を開発し、ECで販売。青木氏がITベンチャーで培ったマーケティングのノウハウを生かし、順調に売り上げを伸ばしていった。

大久手山本屋の土産商品(写真:筆者撮影)
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