レゾナック・ホールディングスは5月13日に2026年12月期第1四半期(1〜3月)決算を発表した。売上収益は、生産設備の定期修繕や事業譲渡の影響により、3079億円と前年同期比で132億円の減収となったものの、本業の儲けを示すコア営業利益は前年同期比約2.3倍となる336億円に達した。
この好業績をけん引したのは、生成AI市場の爆発的な拡大に伴う半導体後工程材料の需要増だ。同社の最高財務責任者(CFO)の染宮秀樹氏は「例年1〜3月期は季節性の影響を受けるにもかかわらず、AIなどの先端半導体向け製品の好調継続により、半導体後工程材料の売り上げは四半期ベースで過去最高となりました」と手応えを語る。
これを受け、同社は2026年12月期上期(1〜6月期)の業績予想を上方修正した。コア営業利益は前回公表値から約40%引き上げた740億円を見込む。
一方で、通期予想については据え置いた。その背景には、緊迫化する中東情勢によってサプライチェーンの先行き不透明感が増している状況がある。
実際に、原料価格の高騰を理由に値上げを発表している製品もある。染宮CFOは「原材料あるいはエネルギー価格の上昇分は、全て価格に転嫁したいと思っている」と話した。
AI向け半導体需要の急拡大で業績が伸びる一方、同社は新たなリスクにも直面している。決算説明会の内容から、要点を整理する。
今回の好決算を支えたのが、生成AI向け半導体材料の需要拡大だ。特に同社が強みを持つパッケージングなどの後工程向け材料が大きく伸長した。
染宮CFO AI半導体に関連する絶縁接着フィルム(NCF)、放熱シート(TIM)、基板用銅張積層板(CCL)は、いずれも想定を上回る極めて好調な推移となった。
これら先端領域の好調継続により、例年であれば季節性の影響を受けやすい第1四半期(1〜3月)でありながら、半導体後工程材料の売り上げは、四半期単位で過去最高を記録した。
一方、通期予想を据え置いた点からは、中東情勢の緊迫化に伴うサプライチェーンへの警戒がうかがえる。
染宮CFO 足元ではクリティカルな影響は出ていないが、下期を見通すと極めて不透明だ。半導体材料の原材料が先々まで確保できるかどうかは、状況を見てみないと分からない。
下期に向けた引き合いのボリューム自体は、2月時点の想定よりも増えている。しかし、中東情勢の影響でサプライチェーン全体がどう動くかが読み切れない。原材料調達や物流の停滞への懸念が、現時点での据え置き判断につながっている。
中東情勢の影響は、すでにコスト面で顕在化し始めている。特に原材料価格の上昇が顕著な製品については、顧客との厳しい価格交渉に臨んでいる。
染宮CFO 電子回路基板を製造するための材料である銅張積層板(CCL)とプリプレグについては、1月に30%の値上げを発表した。第1四半期の業績には、この値上げの影響はまだほとんど反映されておらず、影響が見られるのは下期からになると予想している。
また、クロロプレンゴムなどのケミカル製品も中東情勢の影響で原材料価格が上がっており、5月から値上げを実施する。今後も原材料やエネルギー価格の上昇が続くのであれば、その分は全て価格に転嫁したいと考えている。
同社では、石油化学事業を分社した「クラサスケミカル」のパーシャル・スピンオフ(特定の事業などを親会社から切り離して、上場企業として独立させること)に向けて準備を進めているが、ここにも地政学リスクの影響が懸念される。
染宮CFO クラサスケミカルは第1四半期について、定期修繕の影響で減収・減益となっている。その期間は中東情勢の影響を直接受けずに済んだという見方もできる。スピンオフに向けた手続き自体は順調に進んでいる。
ただし、ホルムズ海峡の封鎖リスクなど中東情勢がこのまま緊迫し続ければ、上場にあたっての「成長ストーリー」に影響が出る。今後の中東情勢を注視しながら、上場時期を慎重に見極めていく考えだ。
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巨大テックのAI開発を停滞させない レゾナックが証明した「後工程」という日本の武器Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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