仕事での「失敗」は、誰もが避けたいと思うものです。「ダメなやつだと思われたかもしれない」「上司になんて言われるだろう」「同期の〇〇だけには知られたくなかった」などなど、時間が経てば経つほど、周りの目が気になりがちです。
しかし、ビジネス環境の不確実性が高まる現代において、全ての失敗を完全に排除することは不可能です。むしろ、失敗をどのように捉え、そこから何を学ぶかが、個人と組織の成長の成否を分ける決定的な要素となります。
先日、ジェイックが発表した20代正社員の「仕事の失敗」に関する調査の結果は、その萌芽(ほうが)を感じさせるものでした。「仕事において、直近1年間で大きな失敗を経験した」と回答した20代正社員は31.0%でした。また、失敗を経験した人のうち、64.0%が「経験した失敗は成長につながった」とポジティブに捉えていたのです。
一方で、この結果に「また仕事が増える」と頭を抱えた人もいることでしょう。
「会議の資料を頼んだら誤字脱字だらけで、指摘してもわびるそぶりもない」
「ミスをした部下を励ましたら、自己肯定感が強いのか全く気にしてなくて驚いた」
「誰かがミスをすれば、余計な仕事が増えるという常識を理解できない若手が多い」etc,etc──。
これらは、現場のリーダーから度々耳にした、若い社員のミスに対する冷ややかな「本音」の数々です。
なぜ、これほどまでに「失敗」に対する認識が、世代間で決定的に食い違ってしまうのでしょうか。実は、若い社員が「成長につながった」と語る失敗と、リーダーが「仕事が増える」と眉をひそめる失敗は、そもそも「性質の異なるもの」である可能性が高いのです。
私たちはつい「失敗=全て等しく避けるべき悪」とひとまとめにしてしまいがちです。ですが、組織で起こる失敗を一括りにして扱うからこそ、責任のなすり合いや、不毛な怒りの応酬が生まれてしまうのです。そこで今回は、失敗を真の成長の糧へと昇華させるための「組織の失敗学」についてあれこれ考えてみます。
組織における失敗を建設的な学びに変えるための強力なフレームワークとして、参考になるのが、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱する次の「3つの失敗」です。
すでに業務の手順やマニュアルが確立されているにもかかわらず、不注意やスキル不足、プロセスの逸脱によって発生する失敗です。大部分は「悪い失敗」と考えて問題ありません。
具体的には、定型のデータ入力ミスや、確認手順のスキップなどが該当します。この失敗への対策は、適切な研修の徹底とサポート、チェック体制の強化などを実施することです。
もし、このような手立てを講じてもなお失敗が起こった場合、予防できる失敗では原因を特定し、解決策を講じることが可能です。
組織で生じる多くの失敗がこれにあたります。
ビジネスの現場は、多様な要因が複雑に絡み合っているため、どれだけ注意深くプロセスを構築していても、複数の固有事象や想定外の環境変化が重なることで、不可避的に失敗が発生してしまうのです。例えば、新システムの導入初期に予期せぬバグが多発する、市場の急変で既存の必勝パターンが通用しなくなるといったケースです。
安全管理や、起こった事象を徹底的に分析するなどリスク管理のベスト・プラクティスに従うことで、深刻な失敗は回避できます。しかし、小さなミスを避けるのは極めて難しいので「失敗=悪」とみなすと、ますます失敗が起きやすくなります。
重大な失敗を回避する意味でも、小さな失敗やニアミスを即座に報告する体制づくりが不可欠です。
挑戦の過程で生まれる「良い失敗」で、 これこそが組織が最も推奨し、歓迎すべき失敗です。
具体的には、未踏の領域への挑戦や、新規事業の開発、新しいマーケティング手法の実験など新しい試みにおいて、事前に十分な仮説と準備を重ねた上で発生する失敗を指します。結果としては「失敗」であっても、そこからは「何が上手くいかないか」という貴重な知見が得られます。イノベーションの源泉となるのは、まさにこの知的な失敗です。
このように失敗の性質を見極めることで、リーダーは「どの失敗を叱責(しっせき)し」「どの失敗を称賛すべきか」を明確に区別し、効果的な戦略を立てられます。
ここで落とし穴となるのが「心理的安全性」の概念です。
近年、多くのマネジメント論で「心理的安全性の重要性」が叫ばれています。しかし、単に「心理的安全性」という念仏を唱えているだけでは、現場は何も変わりません。リーダーに求められるのは「失敗から学ぶ文化」を築くことです。
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