AI時代、社長は何を決め、何を残すべきか? サイバーエージェントとfreeeのトップが語る「社長の仕事」

» 2026年06月25日 07時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

本記事の内容は、フリーが6月16日に開催した「freee 統合ワールド 2026」内で実施されたセッション「超解剖 社長の仕事──サイバーエージェントを承継した山内隆裕 × freee創業CEO佐々木大輔と一緒に考える、社長とは。経営とは。」の内容を要約したもの。


 AI時代、企業を率いるトップは、何を決断し、何を変え、何を変えるべきではないのだろうか。

 2025年末にサイバーエージェントの創業者・藤田晋氏から経営を引き継いだ山内隆裕社長と、創業以来14年にわたりフリーを率いてきた佐々木大輔CEO。両氏が「社長の仕事」をテーマに、日々の意思決定や組織運営、AI時代の経営について語った。聞き手は、フリー 専務執行役員 CoS(Chief of Staff)の川合純一氏。

sf (右から)フリー 佐々木大輔CEO、サイバーエージェント 山内隆裕社長、フリー 専務執行役員 CoSの川合純一氏(筆者撮影)

──これまでのキャリアの中で最も大きな「決断」とは

山内氏: 私はサイバーエージェントに新卒で入社した2006年から、さまざまな事業の立ち上げを経験してきた。これまでの決断で最も大きかったのは、2009年に社内起業した「CyberZ」の事業転換だ。

 当時はガラケー向け広告事業を手掛けていたが、本当に鳴かず飛ばずで、黒字と赤字を繰り返していた。本社から追加投資の判断を求められる中で「このまま延命するか、それとも方向転換するか」を迫られた。

 その時に目を付けたのがスマートフォンだ。まだiPhoneの普及台数も少ない時代だったが、自分自身が使っていて便利さを実感していた。「これは必ず広がる」と考え、スマートフォン専業の広告代理店へ業態変更する決断をした。

 既存顧客をどうするか、社員はどう感じるかなど、不安はたくさんあった。しかし、やると決めた以上はゼロベースで全部振り切ろうと考え、結果としてその判断が会社の成長につながった。

──「決める」という仕事をどう捉えているか

佐々木氏: 「決めなくていいのであれば決めない」というのが自身のスタイルだ。しばらく様子を見ていると、本当に重要なことが見えてくる場合があるし、逆にどうでもよくなることも。そうなれば他の人に任せればいい。

 ただ、何度指摘しても「組織が変わる気配がないぞ」と感じたテーマについては、社長として明確に方向性を決める。

 例えば数年前「お客さまの話を聞かずに意思決定している」と感じる場面が増えた。データ分析やアンケートは実施されているのに、お客さまの実際の声を聞いていない。それでは良い判断はできない。

 そこで「顧客理解を高めること」を全社的な重要テーマとして掲げた。変化が必要だと確信した時は、強く意思表示をする。

──決めた後、組織にはどのように任せているのか

佐々木氏: 事業責任者との対話を重視している。

 報告や議論を重ねることで、その人がどのような情報を基に判断するのかが見え「この領域は任せられる」「ここは支援が必要だ」と分かってくる。人を見ながら任せ方を変えていくことがポジティブなスタイルだと思う。

山内氏: サイバーエージェントでは「自由と自己責任」がカルチャーの根幹にある。上から「これをやれ」と指示するよりも、本人が自分で目標を決める方が力を発揮できる。だから私はまず「あなたはどうしたいのか」を聞くことにしている。

 もちろん方向性が違う場合もある。その時は対話を重ねながら、お互いの考えが重なる部分を大きくしていく。

 本人が「やります」と言ったことに責任を持つ。それがサイバーエージェントらしいマネジメントだと思う。

──AIの登場によって、経営や組織運営はどう変わったか

佐々木氏: この1年は非常に大きな変化の連続だった。

 AIを前提に事業や業務を変えようとすると、社内規定やプロセスなど、変えなければならないものが数多くある。「法務が認めない」「セキュリティ上難しい」といった理由も次々に出てくる。しかし、それぞれに合理的な理由があるので、一つずつ議論しながら解決策を探っていかなければならない。

 特に変革のスピードを上げようとすると、周囲の見方や考え方そのものを変える必要がある。この1年は、そのためにかなりの時間とエネルギーを使った。

sf フリー 佐々木大輔CEO(筆者撮影)

山内氏: サイバーエージェントは創業以来、変化対応能力を重視してきた。

 広告、ゲーム、ABEMA、アニメと、その時々の変化を捉えながら事業を広げてきた。AIについても「近年まれに見るチャンス」と位置付けている。

 現在、グループ全体で200件以上のAIプロジェクトが動いている。「AI番付」という制度も導入した。各事業のAI活用度を評価し、スコア化している。「横綱」だったら誉れとなる一方「幕下」だと「この事業部はAIを使っていない」といった感じで、結構恥ずかしい。

 全体の力学で、AIに対してポジティブな方向性で「われわれにとってチャンスだよ」といった感じの働きかけをすることで、新しいビジネスの創出や、社員の多様性などを高めていこうと考えている。

 社員にとってAIが身近になり、特に若手にとっては短期間で成長できる機会にもなっている。一方で、アニメなどクリエイティブ領域では著作権や権利の問題もあり、領域ごとの事情を踏まえながら進めている。

──AI時代だからこそ、変えずに残したいものは

山内氏: サイバーエージェントにとって最も重要なのはカルチャーだ。自由と自己責任という考え方は今後も残していきたいと思っている。

 最近は、AIによって情報収集や面接対策も容易になった。全体の平均点は上がっている一方、個性や独自性は見えにくくなっている。だからこそ、自分で考え、自分で決め、自分の責任で挑戦する文化は大切にしたい。

sf サイバーエージェント 山内隆裕社長(筆者撮影)

佐々木氏: フリーから見て対照的だなと思ったところでは、カルチャーというよりビジョンだ。

 創業以来「スモールビジネスのための経営プラットフォームをつくる」という方向性は一度も変えていない。投資家から「なぜ大企業向けに広げないのか」と何度も聞かれてきたが、そのたびに同じ答えを返してきた。

 われわれが取り組みたいのは、他のプレイヤーが本気で取り組んでいない領域。そのビジョンを実現することが最も重要だと思う。

──社長という仕事についてどう考えているか

山内氏: 社長になって半年だが、不安が頭の中の99%を占めている。社長特有の孤独もあり、夜眠れないときも。しかし、振り返ると、自分で決断して成果を出した時に最も大きな充実感があった。

 挑戦の先にしか価値のある未来はない。絶望や不安も、真剣に考えているからこそ生まれるものだと思っている。

佐々木氏: 私は、うまくいっている時ほど「本当にこれで十分なのか」と考え続けることが大事だと思っている。AIの領域でも、もっと速く変われるのではないか、まだ足りないことがあるのではないかと常に考えている。

 スモールビジネスの企業がAIを活用できる基盤を届ける。そのために全速力で走り続けることが、今の自分の役割だ。

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