伊藤園やダイドーグループHDの他にも、サッポロHD傘下のポッカサッポロフード&ビバレッジが、今年3月に自販機事業から撤退し、会社分割によるライフドリンクカンパニーへの売却を決めた。
ポッカサッポロでは、「ポッカレモン」などのレモン関連事業、「キレートレモン」のような機能性飲料といった、スーパー、コンビニ、ドラッグストアで売れる商品が好調であるため、そこに注力していく。
ライフドリンクカンパニーは、お茶、水、炭酸水に商品を絞り、スーパー、ドラッグストア向けの安価なプライベートブランド(PB)を大量生産する会社だ。自販機を大量に保有することで、販売チャネルの拡大にもなる。また、ポッカサッポロから缶コーヒーやジュースを仕入れて売ることもできるため、取り扱う商品を増やせるメリットがあると判断したのだろう。
そもそも、自販機の売り上げが落ちている理由の1つは価格の高さにある。
伊藤園の「お〜いお茶」の600ミリのペットボトルは、メーカー希望小売価格に合わせ、2026年3月以降は237円前後となっている。2022年には150円ほどだったため、直近4年で5割上がっている。
一方、スーパーやドラッグストアでは特売で80円を切ることもあり、コンビニでは150〜160円ほどで買える(さすがにコンビニなどが近くにある街中では、自販機でも同じくらいの値段で売っている)。スーパーやドラッグストアの特売と自販機では、同じ商品でも約3倍の価格差が生じるケースもあるのだ。
自販機は無人で販売できるが、商品の補充やメンテナンスには人手が必要で、電気代もかかる。1台当たりの販売本数が減れば、保守や運営にかかる費用を価格に転嫁せざるを得ない。これでは、多少距離があっても、スーパー、コンビニ、ドラッグストアに行く人が増えるだろう。自販機ビジネスのピークである2000年には、全国で約560万台が設置されていたと言われるが、当時と比べると、スーパー、コンビニ、ドラッグストアの数は増えている。自販機で買わなくても、より安く買える場所が増えたことが、自販機の売り上げを圧迫している。
また、自販機ビジネスは人件費の比率が高い。地域のドライバーが、商品補充、新旧商品の入れ替え、集金、修理、清掃などを担うためだ。昨今のドライバー不足もあり、設置場所を絞らないと回り切れないことが、自販機台数の減少につながっている。
こうした影響から、伊藤園は子会社の伊藤園ネオスに自販機事業を集約することで、自販機の適切な配置を行い、利益を回復させようとしている。また、ダイドーグループHDでは、AIを活用した配送ルートの最適化や需要予測の精度向上、充填回数の削減などに取り組んでいる。さらに、スイーツや地域限定品など、飲料以外の冷凍食品の自販機にも力を入れている。食品などをうまく活用することで、自販機ビジネスの再構築を進めることは可能だろう。
苦境に立つ自販機ビジネスだが、自動運転が進めば、モビリティ機能を備えた自販機が夜間に自ら充填ステーションまで移動し、商品を補充して戻ってくることも可能だと言われている。しかし、それはまだ先の話だ。
スーパー、コンビニ、ドラッグストアとの価格競争に巻き込まれず、いかに効率良く販売するか。自販機を活用する飲料メーカーの手腕が試されている。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
収益悪化が止まらない自販機業界 結局「人手」が必要なビジネスの現実
伊藤園、純利益「75.5%減」 139億円減損が告げる「自販機ビジネス」の曲がり角Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング