「100万台」も減った自販機 深刻化する「価格が高すぎる問題」 飲料メーカーが探る“勝ち筋”とは長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)

» 2026年07月01日 16時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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サッポロHDは自販機事業から撤退

 伊藤園やダイドーグループHDの他にも、サッポロHD傘下のポッカサッポロフード&ビバレッジが、今年3月に自販機事業から撤退し、会社分割によるライフドリンクカンパニーへの売却を決めた。

 ポッカサッポロでは、「ポッカレモン」などのレモン関連事業、「キレートレモン」のような機能性飲料といった、スーパー、コンビニ、ドラッグストアで売れる商品が好調であるため、そこに注力していく。

 ライフドリンクカンパニーは、お茶、水、炭酸水に商品を絞り、スーパー、ドラッグストア向けの安価なプライベートブランド(PB)を大量生産する会社だ。自販機を大量に保有することで、販売チャネルの拡大にもなる。また、ポッカサッポロから缶コーヒーやジュースを仕入れて売ることもできるため、取り扱う商品を増やせるメリットがあると判断したのだろう。

ポッカサッポロフード&ビバレッジの主力商品(出所:プレスリリース)

自販機ビジネスが不調な理由は

 そもそも、自販機の売り上げが落ちている理由の1つは価格の高さにある。

 伊藤園の「お〜いお茶」の600ミリのペットボトルは、メーカー希望小売価格に合わせ、2026年3月以降は237円前後となっている。2022年には150円ほどだったため、直近4年で5割上がっている。

 一方、スーパーやドラッグストアでは特売で80円を切ることもあり、コンビニでは150〜160円ほどで買える(さすがにコンビニなどが近くにある街中では、自販機でも同じくらいの値段で売っている)。スーパーやドラッグストアの特売と自販機では、同じ商品でも約3倍の価格差が生じるケースもあるのだ。

 自販機は無人で販売できるが、商品の補充やメンテナンスには人手が必要で、電気代もかかる。1台当たりの販売本数が減れば、保守や運営にかかる費用を価格に転嫁せざるを得ない。これでは、多少距離があっても、スーパー、コンビニ、ドラッグストアに行く人が増えるだろう。自販機ビジネスのピークである2000年には、全国で約560万台が設置されていたと言われるが、当時と比べると、スーパー、コンビニ、ドラッグストアの数は増えている。自販機で買わなくても、より安く買える場所が増えたことが、自販機の売り上げを圧迫している。

 また、自販機ビジネスは人件費の比率が高い。地域のドライバーが、商品補充、新旧商品の入れ替え、集金、修理、清掃などを担うためだ。昨今のドライバー不足もあり、設置場所を絞らないと回り切れないことが、自販機台数の減少につながっている。

 こうした影響から、伊藤園は子会社の伊藤園ネオスに自販機事業を集約することで、自販機の適切な配置を行い、利益を回復させようとしている。また、ダイドーグループHDでは、AIを活用した配送ルートの最適化や需要予測の精度向上、充填回数の削減などに取り組んでいる。さらに、スイーツや地域限定品など、飲料以外の冷凍食品の自販機にも力を入れている。食品などをうまく活用することで、自販機ビジネスの再構築を進めることは可能だろう。

 苦境に立つ自販機ビジネスだが、自動運転が進めば、モビリティ機能を備えた自販機が夜間に自ら充填ステーションまで移動し、商品を補充して戻ってくることも可能だと言われている。しかし、それはまだ先の話だ。

 スーパー、コンビニ、ドラッグストアとの価格競争に巻き込まれず、いかに効率良く販売するか。自販機を活用する飲料メーカーの手腕が試されている。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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