残念ながら、中小企業にいくらバラマキをしたところで事業を維持するための運転資金に充てられるだけで、労働者の賃金に反映されないからだ。
2024年版中小企業白書の「企業の規模間移動と開廃業」には、日本経済のシビアな現実がデータによって示されている。存続企業264.7万社のうち、成長して規模を拡大した企業はわずか4万社。100社あれば1〜2社しかない計算だ。
「規模変化なし」は254万社で約96%、逆に「規模縮小」は6.7万社(約2.5%)で、規模拡大企業を上回っている。
「規模変化なし」や「規模縮小」の企業は基本的に事業を維持するだけで精いっぱいなので、補助金をもらっても運転資金に充てられる可能性が高い。仮に賃上げしても、それは一時的なもので継続できない。
積極財政による補助金などで手厚い経営支援をしたところで、補助金を活用して事業を拡大し、従業員の賃上げまで実現できる企業は、全体の1.5%にとどまる。厳しい言い方だが、このような政策は「経済政策」などと呼べる代物ではない。
では、どうすればいいのか。「規模変化なし」が大多数を占める日本企業を成長させる経済政策が一つだけある。それは「M&A」だ。現在、事業再編や事業統合に伴う経営資源の引き継ぎを支援する「事業承継・M&A補助金」がある。政府は一律の賃上げ支援策よりも、こうした事業承継やM&Aの後押しに力を入れようとしているのだ。
中小企業のM&Aを促す要因の一つが、「最低賃金の引き上げ」だ。諸外国がやっているように最低賃金を物価上昇に合わせて引き上げていけば、大半が「規模変化なし」「規模縮小」のため、経営が苦しくなる。そこで努力して窮地を脱することができる事業者もいるだろうが、多くは「もうだめだ」と事業を畳むか、同業者に売却するか。それとも、どこかと経営統合しようかと考えるはずだ。
そうした再編の動きが全国で活性化すれば、「規模拡大」の機運が高まる。それは中小企業経営者とその家族にとってはアンハッピーだが、従業員と地域経済にとってはプラスだ。
従業員はこれまでよりも大きな規模の会社で働くことになるので、給料が増えたり待遇が改善したりする可能性がある。地域では、小規模事業者が中小企業へ、中小企業が中堅企業へと成長し、結果として雇用も増え、地域経済が活性化する。
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