同社では、新しいことを始める際の意思決定のための稟議書類をなくし、承認フローを廃止。原則、セルフ承認(自分で決定すること)を認めている。
最低限守るべき境界線として、新規の人材採用やM&A、銀行からの借り入れなど、役員以上の承認が必要な「8項目」だけを定めているという。
これら以外の意思決定は、全て社員が自分で決めて承認してよい。ただし、決定を下す前に「その決定によって影響を受ける周囲の人に相談すること」をルールとしている。ただし、仮に全員が反対したとしても、本人が「それでもやる」と決めれば実行して構わない。
セルフ承認の重みを示す、ユニークなエピソードがある。
ある新入社員が「昼食時に注文している弁当会社を変えたい」と声を上げた。しかし、いざ自分で変えようとすると、現行の弁当が気に入っている社員との意見調整、新しい弁当屋の開拓、価格帯の交渉など、やらなければならない仕事が山積みになった。結果として、その社員は「やっぱり今のままでいいです」と断念したという。
「一般的な承認フローで却下された場合『会社が弁当を変えてくれない』という不満だけが残ります。しかし、自分で変えていいと言われると、当事者としての責任が生まれます。実行するなら、最後までやり遂げる覚悟が必要になるのです」
木村社長は、責任とは「取る責任」(ペナルティを受ける)と「果たす責任」(最後まで自分ごととして向き合うこと)に分けられると話す。社員が金銭的・社会的な責任を「取る」ことは現実的ではない。だからこそ社員には、自身で逃げずにやり遂げる「果たす責任」を求める。この考えがセルフ承認のベースにある。
「自律型組織をつくる上で、自己申告型給与制度は、会社から社員への大きなメッセージです」と木村社長。
従来の評価制度は「過去の成果」を評価し、それをロジック(等級や号俸)に当てはめて「賃金」へと連動させるのが一般的だ。木村社長は「人が人を正しく客観的に評価することは難しい。評価制度への不満は他者との比較や嫉妬が原因となるケースが多く、どれだけ評価の手法や評価者の育成を突き詰めても、なかなか消えません」と指摘する。
そこで同社は「過去の成果に対する評価」と「賃金」を切り離した。
自己申告型給与制度において、給与は過去の成果への報酬ではなく「未来への投資」だ。
社員は「これから半年、あるいは1年で、会社にどのように貢献し、どのような価値をもたらすか」という未来の提案と、希望給与をセットで会社に提出する。会社側は、その未来の提案に「投資できるか」を判断する。もし、その社員の目標が未達に終わったとしても、それは「会社の投資判断の結果」となる。この仕組みによって、会社と社員は同じ「未来」へとベクトルを向けることになる。
「これは評価ではなく、会社と社員の『覚悟の交換』です。『どうすれば給与が上がるか会社が示してほしい』ではなく、自ら『私はこれだけの貢献を果たすから、これだけの給与が欲しい』と主体的に発信する。会社が社員を納得させるのではなく、社員が会社を納得させるのです。この思考へのシフトこそが、真の自律を促します」
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