少し筆者の個人的な体験から紹介したい。
新卒で入ったマスコミ企業に勤めていた20代半ばのこと。出席するよう言われて向かった飲食店には、男性記者だけが数十人集められていた。聞くと、編集局長を囲む会だという。遅れて到着した編集局長は、場に華を添えるためか1人の女性記者を伴っていた。当時の会話を詳しくは思い出せないが、低俗なものだったと記憶している。居心地が悪く、早く帰りたかったことを覚えている。
他にも違和感があったのは休日の野球大会。「下っ端に欠席の選択肢はない」などと先輩記者に参加を強制されたのだが、あまりに解せなかったので適当な理由をつけて欠席した。
そんな10年近く前のことを思い出したのは「オールド・ボーイズ・ネットワーク」(OBN)という言葉を知ったからだ。主に旧知の男性を中心に形成された閉鎖的な人間関係や慣習、組織文化などを指し、組織運営にさまざまな負の影響を及ぼすという。
OBNの具体例について、内閣府男女共同参画局は啓発動画で次のように紹介している。
“おっさんずクラブ”――。不躾(ぶしつけ)な表現が浮かんだのだが、個人や組織に実際に及ぶ悪影響はそんな生ぬるいものではないだろう。OBNが指しているのは、旧態依然とした職場環境に巣くう“内輪の論理”とも言えそうだ。
パーソル総合研究所が実施した調査では、OBNに基づく慣習・組織文化が勤務先にあると感じている人が6割を超えた。OBNは組織や個人にどんな影響をもたらすのだろうか。解消のために効果的な施策とは。
「OBNの影響を受けるのは、女性だけにとどまらず、若年層やシニア層の男性にも『意欲低下』や『キャリア機会の制約』という形で影響が及ぶ」
こう話すのは、同研究所の砂川和泉・研究員だ。
OBNはもともと、英国のパブリックスクールの卒業生たちによる学閥的なネットワークを意味していたが、そこから転じて研究分野では女性活躍の文脈で使われるようになった。近年では女性への影響に限定せず、企業ガバナンスの問題としても注目されている。
日本でも2022年に新語・流行語大賞のノミネート語となり、2024年の「女性版骨太の方針」では啓発の必要性が明記された。2025年には企業不祥事に関する第三者委員会報告書がOBNに言及し、閉鎖的な組織運営を問題視するなど、近年注目を集めている。
今回の調査は2025年12月末から2026年1月初旬にかけて、20〜64歳の正社員2500人を対象に実施。「採用」「評価・昇進」「意思決定」「情報共有」などの組織運営の場面ごとに存在するOBNの影響を、回答をもとに指標化した。
OBNが勤務先に「かなりある」「少しある」「あるかもしれない」と回答した人の合計は6割を超えた。
OBNがはらむ閉鎖性は組織に「新規人材の参入困難」や「離職率の高さ」といった悪影響をもたらす。個人にも「成長停滞感」や「発言躊躇(ちゅうちょ)」が起きやすくなるという。
OBNの悪影響を感じている人は、40代女性で最も大きく見られた。一方、20代男性でも「意欲低下」でプラス41%、60代男性でも「キャリア機会の制約」でプラス42%といった悪影響が見られた。OBNの悪影響は性別に関係なく及ぶと砂川氏は指摘する。
OBNに基づく閉鎖性は、どのような場面で現れるのだろうか。
最も顕著に現れたのは「評価・昇進」の場面だった。「上司や経営層の好みや考え方が昇進の判断に影響することがある」と感じている人は44%に上った。
「アサイン・成長機会」の場面でも影響が大きく「古参メンバーの働き方や価値観、経歴に近い社員がリーダー候補に選ばれやすい」と感じている人が39%に上った。
特徴的なのは、女性社員の比率が高くてもOBNの影響がなくなるわけではない点だ。
女性正社員比率が高い組織ほど閉鎖性はやや低くなる傾向はあったものの、女性比率が5割以上の組織でも、約4割でOBNの影響による閉鎖性が認められた。
「女性を増やすだけでは組織の閉鎖性は自動的にはなくならない」(砂川氏)
属性の多様化は重要な一方で、機会配分や意思決定の仕組みそのものが変わらなければ、偏りは残る可能性があるという。
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