従業員の皆さんが「あれ?」と思っている社内規定や人事制度。人事や総務など管理部門の皆さんが「こんなときどうすれば……」と迷っている制度設計や問い合わせ対応。そうした疑問を、社会保険労務士の佐藤敦規先生に聞いてみました。
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
Q: 私は営業部社員で、外回りが多いです。夏場の暑さ対策として、毎日飲むスポーツ飲料やハンディファン、冷感シートなどの出費がかさんでいます。これらは仕事に必要な出費ともいえます。こうした出費に対し「暑さ手当」を会社に作ってほしいと思うのですが、どうすればいいのでしょうか?
A: 手当を新設するかどうかは、会社の判断に委ねられています。手当という形にこだわらず、夏場だけ備品として用意してもらう形で相談するほうが、実現に近づくでしょう。
手当の支給は、労働基準法が定めている範囲の外にあります。そのため「暑さ手当を設けなければならない」という義務は、会社にはありません。
逆にいえば、手当を設けること自体は会社の判断で自由にできます。社員のモチベーションにつながりますし、求人の際に打ち出せば採用効果も期待できるため、実際に設けている会社もあります。
一方で、会社が新設に慎重になるのには理由があります。一度作った手当を廃止することは「労働条件の不利益変更」に該当するからです。例えば、今年は酷暑でも、来年の夏はそれほど暑くないかもしれません。それでも「今年は必要ない」と会社の判断だけで取りやめることは、まず難しいでしょう。
もう一つの壁が、社員間の不公平感です。外回りの社員だけに手当を支給すれば、他の職種から「なぜ私たちにはないんだ」と声が上がるかもしれません。全国に拠点がある会社なら、地域差の問題も出てきます。規模の大きい会社ほど、こうした調整に時間がかかります。
オーナー企業のような、規模が小さい企業であれば、社長の一声で決まることもあり、意思決定は早いでしょう。給与水準を大きく引き上げることは難しくても、こうした手当で社員に報いるという選択をする会社もあります。裏を返せば、世間の水準を上回る給与を支給している会社では、そもそも手当を設ける必要性が薄いともいえます。
暑さ対策を会社に求めること自体は、決しておかしなことではありません。ただ「手当」という形にこだわると、会社は廃止の難しさや社員間の公平性まで考えることになり、実現のハードルは上がります。「何を負担してほしいのか」を具体的に伝え、備品の支給という選択肢も含めて相談する方が、話は進みやすいでしょう。
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