新幹線や飛行機で、長距離を短時間で移動できる時代。それでも、夜行列車には一定の需要が残っている。ポイントは、移動時間を「睡眠や旅行体験そのもの」として付加価値に変えていることだ。夜行列車の魅力と新幹線の速達性を組み合わせ、JR東海が新たな移動サービスを打ち出した。
ただ、新幹線を夜間に走らせるのは簡単ではない。実は国鉄時代にも、新幹線を夜間に運行する案が出ていたが、騒音対策や保守作業のため実現しなかった。
沿線住民への騒音の影響を抑えるとともに、列車が走らない時間帯に線路や設備の点検・補修を行う必要があるためだ。そもそも、高速かつ高頻度で運行する新幹線は、日中にまとまった保守作業の時間を確保することも難しい。
そこでJR東海が考えたのが、深夜は途中駅で長時間停車し、翌朝に再び走り出すという方法だ。こうして誕生したのが、夜行新幹線ともいえる「東海道ルミエールエクスプレス」である。初回は発売からわずか2日間で完売し、第2回は新大阪発・東京行きの運行も実現した。
夜行列車のロマンと新幹線の利便性を両立させたこの企画は、なぜ好評だったのか。その仕組みと今後の可能性を探ってみたい。
かつて全国各地を走っていた夜行列車は、次々と姿を消している。青森〜札幌間を結んでいた夜行急行「はまなす」は、2016年の北海道新幹線開業に伴って廃止。多くの鉄道ファンに親しまれた夜行快速「ムーンライトながら」も、2020年の運行を最後に姿を消した。
そんな中、寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」は根強い人気を誇る。夜間に移動できるという利便性に加え、いまや希少な存在となった夜行列車ならではの特別感が、多くの人を引きつけているのだ。寝ている間に遠くの街へ向かい、目覚めたら目的地に到着している。そうした旅ができる定期夜行列車は、現在ではサンライズだけになった。
こうした夜行列車への根強い需要を背景に、JR西日本では臨時の夜行列車を運行しており、JR東日本でも新たな夜行列車の運行を計画している。
では、JR東海はどうか。JR東海の在来線区間は、長距離の夜行列車を運行できる在来線が限られている。そこで生まれたのが、新幹線を利用した東海道ルミエールエクスプレスだ。深夜は駅に長時間停車することで、新幹線の運行上の制約をクリアしながら、夜行列車に近い旅を実現したのである。
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