物価上昇などを背景に賃上げへ期待が高まる中、従業員の昇給は、採用力や定着率を左右する経営上の重要課題となっている。
特に中小企業では、大企業と比べて昇給原資の確保が難しく、業種・規模・地域によって対応状況にも幅がある。小規模企業向け会計サービスを提供するエフアンドエム(大阪府吹田市)の調査によると、約8割の中小企業が2026年度に正社員の昇給・賃上げを予定していることが分かった。一方で、価格転嫁の遅れや人件費負担の増加に悩む企業も見られる。
調査結果からは、企業規模や業種、雇用形態によって賃上げの実施状況に差があることが分かった。
約8割の中小企業が、2026年度に正社員の昇給・賃上げを「予定している」と回答した。一方、従業員0〜10人の企業では約2割が「実施しない」と回答。従業員規模が小さい企業ほど、昇給・賃上げを実施する予定の割合が低い傾向が見られた。
正社員の平均昇給率は「2%以上3%未満」(22.98%)が最多で「1%以上2%未満」(18.31%)、「3%以上4%未満」(17.57%)が続いた。
月額の昇給額では「5000円以上1万円未満」(31.42%)が最も多かった。
パート・アルバイトなどへの昇給実施率は約4割にとどまり、正社員と比べて業種による差が大きいことが分かった。また、業種別に見ると、宿泊業・飲食業や医療・福祉では実施率が高い一方、情報通信業では実施しない企業が多数を占めるなど、業種によって非正規従業員への対応に差があることが分かった。
製造業や建設業などの企業からは「物価上昇やコスト増が続く中で取引先への価格転嫁が進まず、昇給原資の確保に苦慮している」という声が多く寄せられた。また、最低賃金の引き上げに対応して新入社員の賃金を増やすと、中堅・ベテラン社員との賃金差が縮小し、賃金体系全体の見直しを迫られるという指摘もあった。昇給に伴う社会保険料の増加によって、従業員の手取りが思うように増えないという声も複数あった。
「人材確保のために昇給せざるを得なかった」という声も多く、同社は「離職防止を優先した昇給が広がっている実態が見えてきた。今後も賃上げを継続するには、人件費の増加分を価格に反映できる取引環境の整備が不可欠となる」とコメントしている。
調査は4月1〜30日に同社サービスの会員である中小企業を対象に実施した。有効回答数は2705社。
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「誰かの給料を削って誰かに回す」はもうやめる 膨らみ続ける人件費を武器に変える「賃上げ」の考え方Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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