リテール大革命

店頭の「欠品」はなぜなくならない? 「予測発注」の限界と、先進企業が見いだした「次の解」「3つの『やめる』」で小売りは変わる(2/3 ページ)

» 2026年08月21日 07時00分 公開
[福山 弦ITmedia]

「発注するのは小売り」の常識を変えた、ウォルマートとP&G

 小売業が発注を手放す事例は真新しいものではなく、実は企業間では以前から存在していた。

 1980年代に米Walmart(ウォルマート)と米P&Gが取り組んだ、ベンダー主導型在庫管理(VMI)と呼ばれる方式がこれに当たる。ウォルマートが販売実績(POS)データや在庫データをP&Gと共有し、メーカー側が補充を担った。

 なぜメーカーが補充を担うのか。自社商品の販売実績や在庫状況に加え、生産や供給の状況まで把握できるメーカーが補充を判断することで、供給全体を最適化しやすくなるからだ。

 小売業が自ら発注数量を決めるのではなく、メーカー側が販売・在庫データを基に補充を担う。発注の主体を小売業からメーカーへ移し、補充をメーカー側に委ねたのが、VMIだった。

パナソニックは「売れ残り」のリスクをどこに移したのか

 「誰がリスクを担うか」という問題に対して、家電メーカーが答えを示した事例もある。パナソニックの「指定価格制度」だ。正式には条件付販売と呼ばれる。メーカーが小売店に販売価格を指定する代わりに、売れ残った商品の返品をメーカーが引き受ける方法だ。

 2020年度に一部の家電から試験的に始まり、2023年度には、白物家電の販売金額ベースで38%を占めるまで、指定価格制度の対象を広げた。

 もっとも、パナソニックの事例はVMIのようにメーカーが日々の補充を担う仕組みではなく、指定価格制度にはブランドを守るための別の目的もあるだろう。ただ、これらの事例に共通しているのは、店舗が在庫リスクを抱え、売れ行きを見ながら価格や発注を判断するという従来の役割を見直した点にある。

 これにより、店舗に与えた影響も興味深い。店舗が売れ残りを処理するための値引きに頼る必要性も小さくなった。パナソニックは、この制度による営業利益の改善効果を、2022〜23年度の2年間で約100億円と発表している。在庫リスクを誰が担うかを変えることで、欠品や過剰在庫、値引きの在り方まで変わってくる。

photo02 「発注をやめて、補充する」の正体(筆者作成)

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