もちろん、従業員の自己判断に委ねて責任を負わせることには問題もあります。
例えば、台風の中で無理して通勤すれば、転倒など事故のリスクは高くなります。通勤は会社の安全配慮義務の対象外ですが、けがをすれば労災の対象です。営業担当者が業務上で社用車を使う際、車が水没してしまうリスクもあるでしょう。こうした場合は通勤とは異なり、会社の業務時間内なので安全配慮義務を問われます。
また出社している社員が少なく、顧客からの電話や窓口の来客対応がキャパオーバーとなり、疲弊してしまう状況も想定できます。
7月28日に発生した「令和8年熊本地震」では、イオンモールに戻ったスタッフが爆発に巻き込まれる痛ましい事故が起きました。災害時に行動を社員の判断に任せることは、リスクを伴います。またそうした運用は、往々にして責任感が強い人が無理をしてしまい、心身ともにダメージを被ることになりがちです。
こうした事態を防ぐため、地震や台風、大雨、想定外の積雪などの際に従業員がどう行動するのかを定めた業務マニュアルを作成する必要があります。同時に、個人に負担がかからないような仕組み作りも必要です。
具体的には、
などの対応です。
このような準備をしていれば、無理して出社しなくても自宅で仕事を進められます。従業員の安全を確保すると同時に、顧客からの信頼を損ねずに済むでしょう。
体制作りを一から社内で行わなくても、外部にBCPコンサルティングや運用を依頼する解決策もあります。BCPコンサルティングとは、企業が自然災害やシステム障害、感染症拡大などの緊急事態に備えて、事業を継続または早期に復旧できる体制を構築するための支援サービスです。
こうした対策に費用をかけても、売り上げや企業の知名度向上には結びつきません。無駄な費用と思う経営層もいるかもしれませんが、企業が持続的に発展を続けるためには、不可欠な投資といえるでしょう。
佐藤敦規(さとう あつのり)
社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。
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