日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「伝串50円、ビール190円」――。
最近、飲み屋街でこんな大きな看板を目にする人が増えているのではないか。2010年に創業後、全国約200店舗を展開するまでに成長した居酒屋チェーン「新時代」系列が店頭に掲げる看板だ。ちなみに「伝串」とは、鶏皮を波状に刺して独自製法で焼き上げた同店の名物で、伝串をピラミッド型に盛る「伝串ピラミッド」(税別10本550円〜)も人気だ。
「せんべろ」(1000円でベロベロに酔える)という言葉が定着して久しい。居酒屋では競い合うように安さを前面に押し出す店が増えているが、「薄利多売」が宿命ともいえるため、客の支持を得られない店はあっという間に消えていく。実際、東京商工リサーチによると、2026年上半期の飲食業倒産は509件と、1997年の調査開始以来最多を更新している。
そんな過酷な激安競争が繰り広げられる中で、なぜ「新時代」は順調に店舗を拡大しているのか。
運営元のファッズ(名古屋市)によれば、同店は海外に自社専用ラインを設置しているほか、自社物流システムを導入することで、理論原価率を26.9〜29.9%に抑えている。素材にこだわったものを、低価格で提供できているという。
そう言われると、納得できる部分もある。かく言う筆者も「新時代」のヘビーユーザーだ。近所に店があるので、仕事帰りなどにちょっと一杯飲みに立ち寄ることが多い。安さも魅力だが、名物の「伝串」をはじめ、つまみが普通にうまいのも気に入っている。だからか、一般の酔客だけではなく、ファミリー層や、子ども連れの飲み会なども多く開かれている。
ただ、個人的には「新時代」がここまで成長したのは「安くてうまい」だけではないと考えている。日本の居酒屋業界にまん延している「悪習」への対策を徹底することで、「新時代ならでは」という付加価値を守っていることが大きいのではないか。
その「悪習」とは「パクリ文化」である。
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