ご存じの方も多いだろうが、外食の世界では、急成長している人気店の店名やコンセプト、さらには名物メニューまで模倣する文化がある。分かりやすい例を挙げると、居酒屋チェーン「鳥貴族」から訴えられた「鳥二郎」がある。ほかにも、「ああ、あれもパクリだよな」と思い浮かぶ店が、いくつかあるのではないだろうか。
ただ、これは事業者のモラルがどうこうという問題ではない。本連載の記事「モンテローザに『パクリ疑惑』がかけられてしまう理由」(ITmedia ビジネスオンライン 2018年06月26日)で説明しているが、大ヒットするビジネスモデルが生まれたら、みんなで模倣し、互いに切磋琢磨して業界全体を盛り上げていこうとする考え方は、江戸時代から確認される伝統的な商習慣なのだ。
だから日本では、開発した人よりも、それを模倣して進化させた人が大成功を収めるという「逆転劇」がままある。
そんな「二番手商法」を象徴するのが居酒屋「世界の山ちゃん」だ。
「幻の手羽先」が人気で、今や空港や新幹線の駅でコラボ弁当まで販売される全国区のチェーンだが、実は、そのルーツをたどると、「まね」に行き着く。
中部圏の方ならば釈迦(しゃか)に説法だが、「世界の山ちゃん」の代名詞である「手羽先の唐揚げ」を開発したのは、名古屋市で創業した「風来坊」である。これは「世界の山ちゃん」の創業者である故・山本重雄氏も「元祖は風来坊さんで、私はまねをしただけです」と認めている。
もちろん、ただの「まね」ではない。「風来坊」は甘辛いタレが特徴だが、「世界の山ちゃん」は、それをコショウやスパイスを効かせた味にアレンジ。「酒のつまみ」として進化させた背景には、山本氏の功績がある。
しかし、手羽先の唐揚げを名物料理として定着させたのが「風来坊」である。にもかかわらず、今では「手羽先の唐揚げの元祖=世界の山ちゃん」というイメージが定着している。こうした背景を知らない人が中部圏を訪れて「元祖手羽先唐揚 風来坊」の看板を見て、「世界の山ちゃんのパクリじゃん」と勘違いしてしまうかもしれない。
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