個人の自己管理だけでは限界があるなら、企業には何ができるのか。一部の企業では、すでに睡眠や日中のコンディションを支える取り組みが始まっている。
例えば、三菱地所では昼に15〜30分の仮眠を推奨している。実証実験では、午後の集中スコアが5ポイント改善したという。
ウェディング事業を手掛けるCRAZY(東京都渋谷区)は、一定時間以上の睡眠を取った社員にポイントを付与する「睡眠報酬制度」を導入。平均睡眠時間は5.5時間から6.1時間に伸びたという。
SOMPOひまわり生命保険では、睡眠データの可視化に、研修や専門家への相談を組み合わせた。その結果、睡眠満足度は12.0%から65.0%へ上昇した。
このように、仮眠しやすい環境をつくる、睡眠習慣の改善を後押しする、睡眠状態を把握して専門家につなぐなど、さまざまな方法で企業も働きかけている。
ただ、こうした取り組みは、まだ誰もが利用できるものではない。NRIの調査では、就業者の約7割が「勤務先で利用できる睡眠関連制度がない」と回答した。
勤務先に利用できる制度がないという「制度不足」に加え、制度があっても使われない「活用不足」、支援が必要な人を把握できない「発見不足」も課題となる。つまり、制度を用意するだけでは十分ではない。
そこでNRIが提言するのが、個人任せの「点の支援」から、継続的な「線の支援」への転換だ。
年1回から数回、ストレスチェックなどと合わせて日中の眠気やコンディションを把握する。その結果に応じて、労務環境の整備や睡眠改善プログラム、医療機関の受診・治療など必要な支援につなぎ、その後の状態まで確認する。「評価→支援→フォローアップ」を一続きにする考え方だ。
そのためには、従業員が自身の眠気や不調を安心して伝えられる環境も欠かせない。若林氏は、眠気や不調を申告しても人事評価で不利益を被らない運用を明確にし、安心して相談できる環境を整える必要があると指摘する。
重要なのは、睡眠に関する制度があることだけではない。必要な人を把握できているか、実際に使われているか、その後の改善まで追えているか。日中の眠気を経営課題として捉えるなら、企業には制度の導入だけでなく、その「届き方」まで設計する視点が求められそうだ。
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