自分が厨房で一生懸命働いて提供する寿司よりも、ちいかわ、名探偵コナン、鬼滅の刃などの限定グッズを目当てに訪れ、そこにお金と時間を使う人々を日常的に目にしているうちに、「なんだよ、こっちのほうが手っ取り早くもうけられるじゃん」と、くら寿司でコツコツ働くことがバカらしくなる。そんな荒廃したムードから、犯罪や不正が生まれることもある。
本来、外食のコラボキャンペーンというのは、これまでその店に行ったことのない人の来店機会につなげる、言うなれば新規顧客を獲得するための「飛び道具」的な扱いだった。あくまで食事という「主」があって、コラボは「従」という位置付けだ。
しかし、最近のくら寿司を見ていると、その「飛び道具」が、客数や売り上げを確保するために、なくてはならない存在になっているように感じる。「主」と「従」が逆転している。
断っておくが、コラボキャンペーンを否定しているわけではない。ファンの皆さんにとっては、他で入手できないものをゲットできる大きな喜びだろうし、外食側にとっても新客拡大の大事な施策だ。
ただ、「強すぎるコラボ」には、食事そのものの価値を相対的に低下させてしまう側面もある。その構造は、「オマケ商法」と共通している。
50代以上の読者なら覚えているだろうが、かつて子どもたちに人気のあった「ビックリマンチョコ」では、スーパーゼウスなどの人気キャラクターシールを収集することが目的となり、チョコ菓子が大量に捨てられることが社会問題になった。ビックリマンシールには今もファンがいる一方で、あのウエハースチョコそのものに魅せられた人は少ない。チョコがオマケ扱いとなり、主従が完全に逆転している。
くら寿司にも、そんなムードが漂ってきてはいないか。SNSやネットを見ていると、人気アニメのコラボキャンペーンのときに、ビッくらポン!で景品が当たる確率を高めるため、作品にもくら寿司にも興味のない友人を強引に食事に誘った人もいる。
「お目当ての限定グッズがもらえて超うれしいけど、どんなもん食ってきたっけ? 皿をビッくらポン!に入れるのに夢中で忘れちゃったよ」なんていう客が大挙して押し寄せることは、果たして「成長」といえるのか。くら寿司の「コラボ依存」がこれからどうなっていくのか、注目したい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
富士そば「外国人観光客お断り」は悪なのか 立ち食いそば騒動が問いかけた現実
「ディズニー離れ」のうわさは本当か 入園者2700万人と売上のギャップ
なぜ大阪と浅草でニュースが“逆”になるのか 中国人観光客報道の舞台裏Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング