みずほが条件をここまで緩くできたのは、決して余裕の表れではない。みずほは2026年に入ってから、個人向けの集客策を矢継ぎ早に打っている。7月から8月にかけては、預金残高10万円以上などを条件に現金1万円を配る口座開設キャンペーンを実施した。
9月7日からの「秋トクキャンペーン」では、口座開設、カード入会、給与受取の条件を満たすと最大5万円相当を付与する。内訳はみずほポイント4万5000ポイントと楽天ポイント5000ポイントだ。
さらに9月14日からは貯蓄預金の金利を期間限定で2倍にし、9月18日からは宝くじ付き定期預金も並べる。カードの上限撤廃は、この一連の集客施策の中心に置かれている。
みずほがカード会社を持っていないわけではない。UCカードはみずほ銀行の100%子会社で、オリコも2026年6月に一部を売却した後も議決権の約33.8%を持つ持分法適用関連会社だ。
ただ、2024年11月の楽天との提携会見でみずほFGの木原正裕社長が協業の領域として挙げたのは、オリコは与信審査、UCカードは法人カードで、個人向けカードとしてタッグを組んだのは楽天カードだった。個人向けのポイント経済圏では、この2社とは組まなかったわけだ。
三井住友や三菱UFJが持っていて、みずほが持っていないものがそこにある。口座、カード、証券を自社グループのブランドで束ね、1つのアプリと共通ポイントで回す仕組みだ。三井住友のOliveは口座、カード、証券、保険を1つのアプリにまとめ、共通ポイントのVポイント(2024年に旧Tポイントと統合)を軸に据えて、アカウント数は700万件を超えた。
三菱UFJのエムットも三菱UFJカードと自社ポイントを軸に、8月の発表会資料によれば2025年度に口座開設100万口座、カード発行約100万件を達成した。今回の「ナットク!みずほ」は統合プロモーションの名称であり、OliveやエムットのようなアプリやIDの統合ブランドではない。
そうした中、みずほが選んだのは、楽天の経済圏を借りることだった。提携会見で三井住友のOliveなど他行のデジタル戦略との違いを問われた木原社長は、自前のデジタル化やポイントもやっているとした上で「1人でやるよりもオープンにやったほうが、自分の経済圏が広がるだろう」「他社と協働してやったほうが、より広がりが出る」と答えている。預金の獲得を念頭に置いたリテール戦略として、他社と組むオープンな方針を掲げたことになる。
経済圏を一から作るのは難しい。だが発行枚数3431万枚(2026年6月時点)を抱える楽天カードに相乗りすれば、対象店を選んで還元率を積み上げる仕組みを作り込まずに済み、「どこでも2%」というメッセージを打ち出せる。分かりやすさは、個人向けのカードやポイント、アプリなどを一体化した「自前の経済圏」を持たない側が選べる、数少ない武器でもある。
ただ他社の経済圏を借りる側の弱みもある。低還元になる取引の判定は楽天カードの基準に従うため、条件の主導権はみずほにない。また上乗せ分がみずほポイントで付く二重通貨の構造も、「分かりやすさ」の看板とは少なからず食い違う。
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