第2のポイントが、企業独自の知識やノウハウを活用した「オウンドエージェント」の構築だ。汎用AIに商品情報を提供するだけでは、他社の商品との価格やスペックの比較に終始する可能性がある。そこで、自社ならではの知識や接客ノウハウをAIに組み込み、顧客に独自の体験を提供することが重要になる。
メガネブランドの「JINS」は、オウンドエージェントを店舗接客に活用し始めている。メガネ選びではレンズの種類やフレームとの組み合わせといった専門的な疑問が多い。繁忙期にはスタッフが全ての顧客の疑問に対応し切れず、購入機会を逃すケースもあった。
そこで、スタッフの接客ノウハウを学習させた独自の接客AIを構築した。AIが回答した質問のうち、顧客の疑問解消につながった割合は90%に達しているほか、多言語対応によって外国人顧客への一次対応も実現しており、現場の生産性向上と機会損失の防止に貢献している。
第3のポイントが、これらのAI対応を継続的に運用するための「オペレーション・業務プロセスの構築」だ。人材採用や組織体制の変革にも関わってくる。
また、エージェンティックコマースの時代を見越したAIO対策について「かつてのSEO対策と同じ、プラットフォーマーの仕様変更などに企業が追随し続けるイタチごっこになるのではないか」という指摘もある。だが石井氏は「エージェンティックコマースは入り口の推奨だけでなく、購入、決済、アフターサービスに至るまで体験全体をカバーする点で、従来のSEO対策と異なる」と語る。
エージェンティックコマースの影響は、プロモーションや販売の現場だけにとどまらない。アクセンチュア ソング マネジング・ディレクターの太田郁子氏によれば、AIの影響は「商品開発」にまで及びつつあるという。「海外の化粧品メーカーでは、AIが情報を読み取りやすいよう、成分や効能などをパッケージに詳細に記載するケースが増えている。AIに推奨されることを逆算して商品を設計する世界は、もう近い」(太田氏)
企業の中には、エージェンティックコマース時代の到来に危機感を覚えつつ、変化が激しく、不確実性の高いAI市場を前に、AIOへの対応やオウンドエージェントの構築に踏み出せないケースもあるという。
しかし太田氏は「PoC(概念実証)といったスモールステップでもいいので、まずは仮説を立てて試してみることが重要だ。それによって社内にAI活用の知見やリテラシーが蓄積されることにも価値がある」と考えを示す。
不確実だからと様子見をするのではなく、まずは自社の商品やサービスの情報を構造化し、AIが正しく理解・参照できる状態をつくることが重要になりそうだ。
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