名古屋の既存ホテルを改修し、新たなブランドとして開業するプロジェクトがスタートした。細見さんが主担当を務め、社内では建築担当の社員と2人で進めた。
当時、同社が主に手掛けていたのは土地を取得してホテルを新築する事業だった。既存ホテルの改修とリブランディングを組み合わせた事業は初めてで、投資のスキームも異なる。社内にもリノベーションに詳しい人は多くなかったという。
既存ホテルの改修は、新築のように一から全てを決められるわけではない。
「すでにある『箱』の中でどう組み替えるかを考えるのは、難しいです。一方で、パズルを組み合わせるような楽しさもあります」
細見さんは物件の売買に加え、改修工事や開業準備、開業後の対応などにも一気通貫で携わった。そのため、不動産取引だけでなく、建築やホテル運営の知識も必要だった。その多くは、実務を通じて身に付けていったという。
新たな知識を得るために頼ったのが、社内で働く各分野の経験者だった。霞ヶ関キャピタルには金融や建設、不動産ファンドの出身者のほか、ホテルの運営現場を経験した社員もいる。
「社内の誰かに聞けば、答えにたどり着けるという環境に恵まれていました。そのため、分からないことに直面するたびに、その分野に詳しい人を探して話を聞き、必要な知識を集めていました」
また、ホテルの改修や開業準備には、建築の設計者やデザイナー、開業後の運営を担う人など、多くの関係者が携わる。立場によって優先したいことが異なり、意見が食い違うこともある。
細見さんはそうした意見の違いを、皆がそれぞれの立場からホテルを良くしようとしているからこそ生まれるものだと捉えている。そして自身の役割を、関係者の間に入り、意見を調整する「緩衝材」と表現する。
「一緒に働く人たち全員が、気持ちよく仕事ができることを目指しています。そのため、こちらの希望を伝えるときも、相手へのリスペクトを忘れず、丁寧に伝えるようにしています」
細見さんが初めて担当した名古屋の物件は、2025年7月、全186室の「BASE LAYER HOTEL NAGOYA NISHIKI」として開業を迎えた。
しかし、開業しても細見さんの仕事は終わらない。ホテルを事業として軌道に乗せていくところにまで携わる。同ホテルは収益面でも成果が出ており、旧ホテルが稼働していた2019年の平均実績と比較して、開業後(2025年9月〜2026年3月)の客室平均単価は5964円から1万2438円へ、客室稼働率は72%から86%へ上昇。GOP(Gross Operating Profit:営業総利益)は約3.1倍に拡大しているという。
細見さんは現在、和歌山の複合リゾート施設をリノベーション&リブランディングする事業に携わっている。ホテルに加え、観光魚市場や温浴施設、テーマパークなどが集まる施設であり、ホテル以外の施設も含む事業を担当するのは細見さんにとって初めてのことだ。
「宿泊施設以外にさまざまな施設があるので、その分、企画の幅が広がります。何を実現していくかを考えるところからワクワクしますね」
企画の選択肢が広がるほど、それを形にするために整理すべき要素も増える。開業というゴールから逆算し、何をいつまでに進めるかを決めなければならない。営業事務時代に「仕事は段取り勝負」と実感したという細見さんだが、実際に手順や日程を組むことは今も苦手だという。
「段取りについて、上司から指摘を受けることもあります。苦手な分、無意識のうちに周りに頼りすぎていたところがあったのだと思います」
苦手なことに向き合うのは、楽ではない。それでも、細見さんは仕事の難度が上がることを前向きに捉えている。
「仕事のハードルが上がったと感じるのは、自分も以前より難しいことに取り組めるようになったから。ゲームでレベルが上がると、次に挑む相手も強くなっていくのと少し似ているかもしれません」
入社1年目で「JALマイレージバンクアプリ」発案 「27歳エース社員」が実践する“オンリーワン”を目指す仕事術
「1年間に社長賞2回受賞」 セガグループで「音楽ゲームイベント」をプロデュース、20代エースの“変えない勇気”
「机の上だけの仕事にしたくなかった」 フジクラ、入社3年目の生産管理が"AI特需"を支えるまでCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング