あの企業の20代エース社員にも「新卒1年目」の頃があった。挑戦、挫折、努力、苦悩――さまざまな経験を乗り越えて、今の姿がある。企業に新たな風を吹き込み、ビジネスの未来を切り開く20代エース社員の「仕事」に迫る。
東京・天王洲にある日本航空(JAL)のオフィス前――当時、入社1年目で羽田空港のグランドスタッフとして働いていた森口翼さん(現在はマーケティング戦略部 顧客データ戦略室に所属)は、先輩社員を「出待ち」していた。
新ビジネスのアイデアを募集する社内コンペに挑むため、他部門の先輩から情報を集めようとしていたのだ。
森口さんがコンペに提出したのは「JALマイレージバンクアプリ」の構想だ。同社のマイルに関する機能をスマホアプリ上に集約するアイデアだった。
「やらない後悔より、やる後悔」――その一心で提出したアイデアは、見事採用された。
その後、約2年の開発期間を経て、2023年にJALマイレージバンクアプリは誕生した。今では、同社が推進する「非航空事業の拡大」に貢献し、顧客の生涯価値(LTV)を最大化するための重要な顧客接点へと進化している。同社のビジネスを支えるこのアプリは、実は1年目の若手の企画から始まっていたのだ。
かつてはプロ選手を志し、サッカーに打ち込んできたという森口さん。過去の挫折経験から「ナンバーワンより得意を複数掛け合わせてオンリーワンを目指す」発想を身に付けた。
この発想はどのように育まれ、仕事に生きているのか。取材から見えてきた、27歳エースが大切にしている仕事術とその源泉に迫る。
プロ選手を志し、高校時代は強豪校でサッカーに打ち込んだ森口さん。しかし、努力しても副キャプテンを務めるにとどまった。
「ナンバーワンを目指していましたが、ずっと『副キャプテン』でした」
森口さんは当時をこのように振り返る。一つのことを極めてナンバーワンになるのは難しい。それなら、複数の得意を掛け合わせてオンリーワンになるのはどうか?――次第にそう考えるようになったという。
高校卒業後は滋賀大学のデータサイエンス学部に1期生として入学した。
「もともとデータサイエンスに強い興味があったわけではありませんでした。でも、パイオニアとして何かを学ぶことは、オンリーワンを目指す上で強い武器になる。そう考えて新設の学部に入学しました」(森口さん)
大学のサッカー部では、部内に「データ分析チーム」を立ち上げ、プロサッカーチームと連携しながら、ケガを減らすための実証実験などに取り組んだ。データ分析という強みを持ったことで、部内でオンリーワンのポジションを確立していった。
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