執務エリアは6フロアで、基本は部署ごとに分けられている。あえてフリーアドレスにしなかった理由について、坂口氏はこう説明する。
「紀尾井町の本社でフリーアドレスを採用していたこともあるのですが、あまりうまくいかなかったんです。みんながどこにいるのかすぐに分からなかったり、毎回席が変わるのがめんどくさかったりと、メリットがデメリットを上回れなかった。その反省から、今回のオフィスは部門ごとに比較的きちんと分けることにしました」(坂口氏)
フリーアドレスについて、毎回同じ席に座ってしまったり、いちいち席を選ぶのがおっくうだったりという話はさまざまな企業のオフィス担当者からよく聞く。同社の話を聞いて、もしかすると、日本企業向けにカスタマイズして採用するのがいいのかもしれないと感じた。
また、執務エリアには100人ほどが集まれる「CONNECT HUB」というスペースを用意している。ホワイトボード、デスク、椅子が自由に動かせるため、用途に合わせて柔軟に利用できる。著者が訪れた際は、研修スペースとして使われていた。
エレベーターを降り、執務エリアに入るまでの間には「CONNECT STREET」と呼ばれる共用エリアを設けている。執務エリアの周囲をぐるりと囲むように配置され、椅子や机も並ぶ。
偶発的な出会いや会話を生み出す場としての役割を期待しているといい、実際、取材中にも従業員が打ち合わせをする姿が見られた。執務エリアが集中して仕事に取り組む場である一方、一歩外に出れば気軽に会話を交わせる。そんなメリハリのある空間設計が印象的だった。
また、面白いのが、CONNECT STREETは6フロアそれぞれ配色や什器が異なるところ。佐藤氏は「限られた予算ですが、全て同じデザインではつまらないと思い、普段の仕事場を楽しくするのはどうすればいいか考えました。またこれだけ広いオフィスにいると、自分が今どこの階にいるか忘れる時があります。自分のフロアの色を覚えていればすぐに間違いに気付けます」と話す。
一通りオフィスを回って感じるのは、派手さがないが従業員が落ち着ける環境を提供しようという狙いだ。コンセプトの一つである「Easy」(分かりやすさ・快適性)には「仕事しやすい」「生活の動線の延長にある」「自宅のような快適性の再現」などが含まれる。
坂口氏は、新オフィスについて以下のように考えを語る。
「ハイブリッドワークになったことで、オフィス自体を働くためのツールの一つとして従業員には使い倒してもらいたいと考えています。なるべくシンプルで使いやすいものを意識して設計しました。また、オフィスは会社の顔でもあります。随所にLINEヤフーらしさを取り入れ、ブランディングにも注力しています。オフィスがメディアのような役割になっていくことも期待しています」(坂口氏)
佐藤氏も出社回帰を決めた同社の意向に即して、以下のように話す。
「今までフルリモート勤務だったわけですから、出社回帰に反発する従業員がいる気持ちも分かります。ただ、その一方で出社して対面で顔を合わせることで生まれるものも確実にある。例えば、組織や横のつながりをリアルに感じられることです」
「会社というと、どうしても“働く場”として捉えがちですが、大学などで過ごした学生時代のように、人とのつながりや居心地の良さを感じられる場所にもできると思うんです。仕事だけではなく、日々の生活にも自然と溶け込む。そんな場所になればいいなと思っています」(佐藤氏)
同社は今後、オフィス運用から1年たつ2027年5月ごろに効果検証を実施し、その後の運用方法の変更、改善を施す予定だという。
フルリモートからハイブリッドワークへかじを切ったLINEヤフー。リアルで顔を合わせながら仕事をする中で、今後この新オフィスからどのようなサービスが生まれるのか楽しみだ。
太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)
1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。
その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。
2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329
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