そう考えると、一つの疑問が浮かぶ。
AIの方が人間より上手にコンピュータを使えるのであれば、そのコンピュータを手元に置く必要があるのだろうか。 Dotsでは、AIエージェント自身がクラウド上にLinux仮想コンピューターを持っている。人間のPCを遠隔操作するのではなく、AI自身の作業場所がクラウド上に用意されているわけだ。
この形が広がれば、人間の手元にあるPCの役割も変わってくる。 人間は手元の端末から「この資料を調べて」「経費処理をして」「このアプリを修正して」とAIに指示する。実際の作業はクラウド上の仮想コンピュータでエージェントが担い、人間は結果を確認する。
これは、かつて企業で使われてきた「thin client」(シンクライアント)に似ている。
シンクライアントは、計算処理やデータをサーバ側に置き、手元の端末では、主に画面表示や入力だけを担う仕組みだ。 ただ、AIエージェント時代のシンクライアントには大きな違いがある。これまでのシンクライアントでは、クラウド上のコンピュータを操作するのはあくまで人間だった。これからは、その操作自体をAIエージェントが担うことになるのだ。
既にその方向を示す製品もある。米Microsoft(マイクロソフト)の「Windows 365 Link」は、Windows 365のクラウドPCへの接続を前提にした小型端末で、米国での希望小売価格は349ドル。処理やデータの多くをクラウド側に置く設計になっている。
もちろん、動画編集やゲーム、ローカルAIなど、高い処理能力を手元に必要とする用途は残る。一方、メール、資料作成、情報収集、経費処理といった一般的なオフィスワークをAIエージェントに任せるようになれば、PC市場の一部では、高性能化より低価格化が進む可能性がある。
クラウド上の仮想コンピュータには、もう一つ「セキュリティ」という利点がある。 一般ユーザーのPCには、仕事のファイル、個人データ、ブラウザのログイン情報、さまざまなアプリが混在している。OSやソフトウェアの更新、アクセス権限の管理も、ユーザー自身に委ねられている部分が大きい。
強力なAIエージェントにそうしたPC全体を操作させるより、エージェント専用の仮想環境を用意し、アクセスできるデータやアプリを必要な範囲に限定する方が管理しやすいのだ。
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