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AIによる“社会崩壊”まで残り3年 トップ識者が警告する「地獄のシナリオ」

» 2026年05月04日 08時00分 公開
[湯川鶴章、エクサウィザーズ AI新聞編集長]
ExaWizards

 「ユートピアか消滅か。それは最後の瞬間まで接戦のバトンリレーになるだろう。人類は宇宙での存続資格を得られるかどうかの『最終試験』に挑んでいる」

 1981年、米国の建築家・未来学者バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller)氏はそう語った。いま、この言葉が再び現実味を帯びている。

 米実業家ピーター・ディアマンディス(Peter Diamandis)氏と、ベーシックインカムの提唱者として知られるアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏は最近の対談で「AIによる社会変化に対処するために残された時間は1〜3年程度しかない」と警告した。

 AIがもたらす生産性の爆発は、最終的には人類に豊かさをもたらす可能性がある。しかしその途中には、社会が崩壊しかねない危険な移行期があるという。

 ヤン氏は、この移行期を乗り切るための3段階の社会モデルを提示している。

photo AIによる社会変化に対処するために残された時間は1〜3年程度しかない(以下写真提供:ゲッティイメージズ)

ベーシックインカムから「究極の豊かさ」へ 3段階の社会モデル

 第一段階は UBI(Universal Basic Income:ベーシックインカム)。政府が全国民に一定額の現金を配る制度だ。AIによる雇用破壊が急速に進む中で、社会の安定を保つ「橋渡し」の役割を担う。

 第二段階は UBS(Universal Basic Services)。医療、教育、交通などの基本サービスを公共インフラとして広く提供する仕組みで、現金給付に依存しない生活基盤を整える。

 そして最終段階が UHI(Universal High Income)。AIとロボットがほとんどの生産を担い、人類全体が豊かさを享受できる社会である。

「もう新人は必要ない」 最初に消滅する若者のキャリア

 しかし問題は、この未来にたどり着く前に社会が壊れてしまう可能性だ。すでにその兆候は現れ始めている。AIが最初に消し去りつつあるのは、キャリアの入り口となるエントリーレベル職だ。

 米メディア「Morning Brew」の共同創業者オースティン・リーフ(Austin Rief)氏によれば、ある大手プライベートエクイティ企業の社内会議で最初のスライドに掲げられたのは「もう新人は必要ない」という言葉だった。AIが新人の分析業務を代替できるようになったためだ。

 同様の動きはテック企業でも起きている。米決済企業Block社は約4000人を解雇したが、株価は逆に24%上昇した。

 「人を減らすほど企業価値が上がる」というメッセージは、他のCEOにも強いインセンティブを与える。ソフトウェア開発の現場でも変化は急速だ。

 かつての組織構造は、シニアエンジニアの下に多数のジュニアがいる「ピラミッド型」だった。しかしAI開発ツールの進化により、現在は「柱型」に変わりつつある。シニアが1人、ジュニアが1人程度で十分になり、若手が経験を積むための入り口そのものが消え始めている。つまり若者は、キャリアの最初の一段目にも登れないのだ。

崩壊する社会契約 保険会社CEO暗殺に“熱狂”した米国の闇

 ヤン氏は、この状況が米国の若者の心理にも影響していると指摘する。近年の米国では、成功した起業家や富裕層に対して「成功者は誰かを踏みつけてきた人間だ」という感情が広がりつつあるという。

 例えば、2024年12月4日、ニューヨーク・マンハッタンで米UnitedHealthcare社のCEO、ブライアン・トンプソン(Brian Thompson)氏が射殺された事件で、ソーシャルメディア(特にXやTikTok)では、トンプソン氏の死を悲しむ声よりも、保険業界の事前承認を皮肉ったジョークが氾濫。容疑者を『Time』誌の「Person of the Year」(今年の人)に推す投稿が1万4000以上の「いいね」を獲得した。また、UnitedHealthcareの公式追悼メッセージに対して7万7000件以上の「笑い」の反応が寄せられたという。

 「真面目に働いて納税していれば幸せになれる」という、これまでの「社会契約」が崩壊の兆しを見せているわけだ。では、この危機にどう対処するのか。

富裕層の還元と、個人が生き残る道

 ヤン氏は2つの可能性を挙げる。

 第一は政府が動くことだ。ただし本人も「可能性は高くない」と率直に語る。80歳代の政治家が急速に進化するAIを理解し、数年以内に制度改革を実現するのは難しいからだ。 より現実的なのは、富裕層やテック企業が直接社会に資金を還元する動きだという。

 例えば マイケル・デル(Michael Dell)氏は、米テキサス州の低所得層の子どもたちの教育資金として約6億ドルを寄付した。投資家レイ・ダリオ(Ray Dalio)氏もコネチカット州で類似の取り組みを進めている。

 また米AnthropicのCEOであるダリオ・アモデイ(Dario Amodei)氏は「AIは今後1〜5年でホワイトカラーのエントリーレベル職の50%を自動化する可能性がある」と認めた上で、AI企業が得る巨額の富の多くを社会に還元すべきだと公言している。では個人はどうすべきなのか。

 ヤン氏とディアマンディス氏は、いくつかの提案を挙げている。個人はベーシックインカムの議論をSNSなどで広げ、政治家に無視できないテーマにすること。富裕層は政府を待たず、自分の地域で直接給付を行う「デル方式」を試すこと。親は「大学→就職」という一本道のキャリアモデルに固執せず、やり抜く力や社会性、手で何かを作る能力を育てること。

 学生はAIに宿題をさせるのではなく「星間宇宙船を設計する」ような大胆な創造的なプロジェクトに使うこと。そしてCEOは短期の株価だけでなく、社会そのものが存続できるかどうかを考えるべきだという。

 AIは、人類にかつてない豊かさをもたらす可能性を持つ。しかしその未来が天国になるか、地獄になるかは、まだ決まっていない。そしてヤン氏は言う。「残された時間は、おそらく3年ほどしかない」と。

photo 残された時間は、おそらく3年ほどしかない

本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「シンギュラリティは天国になるのか地獄になるのか」(2026年3月15日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


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