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【10月改正】「同一労働同一賃金」の意外な落とし穴 AI台頭で“待遇差への言及”が増える可能性も(3/3 ページ)

» 2026年10月26日 05時30分 公開
[佐藤敦規,ITmedia]
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罰則なしでも油断NG AI普及で変わる労務リスク

 労働条件通知書の記載内容が変わっても、実際に説明を求めてくるパート社員や契約社員は少ないだろうと、楽観視している企業もあるかもしれません。厚生労働省のリーフレットや説明資料は、図版を増やすなど分かりやすくなってきたものの、労働基準法になじみがない労働者にとって、内容を理解するのは容易ではなかったからです。

 しかし、昨今はAIツールの進化により、状況が一変しました。

AIの進化で労務リスクも変化

 生成AIに「同一労働同一賃金で不合理とされる例」と入力すれば、基本給や手当、福利厚生など、不合理と判断される可能性があるケースを一瞬で列挙してくれます。「会社への確認事項」と入力すれば、会社への質問文も考えてくれます。

 つまり、法改正の詳細を知らなくても、AIを使えば、パート社員や有期契約社員の誰もが不合理な点を整理し、会社に質問できるようになったのです。

 不合理な待遇差を解消するには、裁判に訴えるしかない場合もあります。弁護士費用などの負担を考え、断念していた人もいるでしょう。パート社員や契約社員は、正社員に比べて時給が低いことも多く、裁判に勝って待遇差が是正されても、弁護士費用などを差し引くと経済的なメリットが小さかったためです。

 しかし今後は、弁護士に依頼せず、AIを活用して自ら裁判を起こす「AI本人訴訟」が増える可能性もあります。訴状や準備書面といった裁判に必要な書類の作成を弁護士に依頼せず、AIを使って本人が作成して訴訟を起こす事例です。

慌てないために知っておきたい、企業がすべき対応は?

 では、こうした変化に対して企業はどう対応すべきでしょうか。パートや契約社員から説明を求められた場合は、以下の対応を取る必要があります。

  • 正社員との待遇の相違などについて説明する際には「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付するなどの方法」のいずれかにより説明する。
  • 賃金を決定する際には、職務の内容や成果、意欲、能力、経験をはじめとする要素を公正に評価し、昇給に反映するなど、公正な評価に基づいて決定する。

 就業規則や賃金規定、評価制度などをもとに、正社員との違いを整理し説明できる資料を用意します。相手が納得する状況までは求められていませんが、説明を避けたりあいまいな対応でごまかそうとしたりするのは悪手です。

 忘れてはならないのが、個々のパートや契約社員の業務内容を再確認することです。もしクレーム対応や売り上げノルマなどが正社員と同様に課されている場合は、注意が必要です。

 責任の重さに差がないと判断された場合、労働基準監督署から改善の指示が出されます。それを無視すれば、パートや契約社員から裁判で訴えられ、多額の賠償金を負うリスクがあります。

著者プロフィール

佐藤敦規(さとう あつのり)

社会保険労務士。中央大学文学部卒。50歳目前で社会保険労務士試験に挑戦し合格。三井住友海上あいおい生命保険を経て、現在では社会保険労務士として活動。法人企業の助成金の申請代行や賃金制度の作成に携わっている。 社会保険労務士としての活動以外にも、セミナー活動や、「週刊現代」「マネー現代」「プレジデント」などの週刊誌やウェブメディアの記事を執筆。 著書に、『45歳以上の「普通のサラリーマン」が何が起きても70歳まで稼ぎ続けられる方法』(日本能率協会マネジメントセンター)、『リスクゼロでかしこく得する 地味なお金の増やし方』『おじさんは、地味な資格で稼いでく。』(以上、クロスメディア・パブリッシング)などがある。


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