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バブル崩壊が生んだBセグメントの隆盛:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)
バブル崩壊以降の長引く日本経済の低迷によって、消費者の意識は大きく変容してしまった。「いつかはクラウン」と言いながらクルマを何度も買い替える時代は終わり、皆が軽自動車とBセグメントを買い求めるようになった。
一方、世界を見れば、従来食うや食わずだった新興国が経済発展を始め、Aセグメント、Bセグメントのクルマを買えるようになった。2000年代に入ってから北米を除く全てのマーケットで、最重要製品は小型車という時代に突入したのだ。
そういう情勢を背負って、Bセグメント戦線では非常に厳しい戦いが繰り広げられている。メカニズム的にも選択肢が事実上ない。エンジンは横置きFFレイアウト。ボディサイズが限られているのでフロントサスペンションはストラット式一択。リアサスペンションはコストと性能のバランスからカップルドビーム方式以外あり得ない。ほかに選ぶとすればトレーリングアームだが、限界時の挙動がリスキーで、それを押さえ込もうと思えば相当に頑張らなくてはならない。そこまでしてトレーリングアームでなければならない理由がほとんどないのだ。
つまり、Bセグメントはどこの誰が作っても同じ構成にしかならない。横置きFFでフロントがストラット、リヤがカップルドビームとなる。各社横並びのエンジニアリング要素でどうやって他社より優秀なクルマにするかを競い合っているわけだ。
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