連載
バブル崩壊が生んだBセグメントの隆盛:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/5 ページ)
バブル崩壊以降の長引く日本経済の低迷によって、消費者の意識は大きく変容してしまった。「いつかはクラウン」と言いながらクルマを何度も買い替える時代は終わり、皆が軽自動車とBセグメントを買い求めるようになった。
さらに昔と違ってコストがどんどん上昇している。その原因は衝突安全と電子制御である。まず衝突実験に膨大なお金をかけて、衝突時にフロントを上手に潰して衝撃を吸収し、キャビンの強度は上げて変形を極力抑えなくてはならない。この一連の開発だけでも二ケタ億円の開発費が飛ぶ。
アンチロックブレーキやブレーキアシストを含む、ぶつからないブレーキも今や必須だ。エアバッグももちろん抜きにはできない。
主要メカニズムについて、低燃費にするためには電制スロットルはもはや基本だし、最先端についていこうと思えば直噴インジェクターを導入しないとならない。トランスミッションも電制化しないとカタログに記載する燃費性能で負けるのだ。
こうした装備は昔のクルマにはなかった。デバイスを山盛りに付ければ値段が上がるのは当然だ。ところが、前半で書いたように、ユーザー側のコスト要求は極めて厳しい。高いと買えない。背に腹を変えられない事情がある。
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