バブル崩壊が生んだBセグメントの隆盛:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
バブル崩壊以降の長引く日本経済の低迷によって、消費者の意識は大きく変容してしまった。「いつかはクラウン」と言いながらクルマを何度も買い替える時代は終わり、皆が軽自動車とBセグメントを買い求めるようになった。
つまり現在のBセグメントはエンジニアリングの基本の部分は各社ほぼ同じで、それに電制メカニズムをどう付加していくか、そしてそれをいかに安く売るかの争いになっているのだ。
そうやって作ったクルマを変奏曲のように展開して、さまざまなボディバリエーションを生み出していく。トヨタで言えば、「ヴィッツ」をコアにして、そのハイブリッド版が「アクア」、スペシャリティが「ist」、2列シートのワゴンが「ラクティス」、3列シートのミニバンが「シエンタ」(ただしリヤは「カローラ・スパシオ」)、商用が「プロボックス」(こちらもリヤは「カローラ・スパシオ」)という具合だ。トヨタには無いが、日産にはやはりBセグベースのSUVとして「ジューク」がある。
こういうバリエーションを上手に商品企画して、新規開発コストをできる限り抑えながらニューモデルを作り出していかないと勝ち残れない。
Bセグメントは確かに売れているが、それは血のにじむような厳しいコスト制約との戦いの結果なのだ。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
関連記事
- Aセグメントのクルマ事情
約100年前にT型フォードが成し遂げた革新によって、クルマは庶民にも手が届く乗り物となった。その偉業は現在の「Aセグメント」にも脈々と受け継がれているのである。 - 自動車の「セグメント」とは何か? そのルーツを探る
国内外のメーカーを問わず、自動車を分類ときに使う「セグメント」。そもそもこれが持つ意味や基準とは一体何なのだろうか――。 - 3つのエンジンから分析するエコカー戦線の現状
今やクルマもエコがブームだ。世の中の環境に対する配慮というのはもちろんだが、利用者にとっても燃費の良いクルマに乗るのは決して悪いことではない。今回は各種エンジン技術を軸にしたエコカーの現状を解説する。 - ベルリンの壁崩壊から26年 自動車メーカーの世界戦略はどう変わった?
自動車メーカーのグローバル戦略が複雑化している。事業拡大に向けて、単純な合従連衡ではなく、各社の思惑や狙いなどが相互に入り混じった形でのアライアンスが目立つようになったのだ。 - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.