私の慢心を打ち砕いたベンチャーコンテスト LaunchPadへの挑戦:経沢香保子の「ベンチャー魂は消えない」(5/8 ページ)
2度目の起業ということでマイペースにコツコツやれば、きっといつかは……。そんな私の気持ちを打ち砕くきっかけとなったのが、スタートアップ企業の登竜門、LaunchPadへの出場だった。
いざ決勝の舞台へ
Launch Padの審査は、書類選考2回、面接2回を経て、最終選考に進むことができる。130社くらいの応募のうち、13社が最後に残った。
プレゼンの準備については、プレゼン技術についての本を数冊読み、何度も構成を練った。6分間で最大限伝えるために、サービス遷移を動画にしたり、セリフも全部書き出して、同じ言葉や変な言い回しをして時間を無駄にしないよう、すべて暗記した。そしてPC操作は社員に任せ、私は舞台の中心に立って、全身を使ってプレゼンするスタイルをとった。
最後は社員と一緒に前日夜から朝まで実に100回ぐらい練習を繰り返した。後からその社員本人に聞いた話だが、最初は私の態度が本気かどうかとらえどころがなかったが、あるとき感情のスイッチがカチッと入る瞬間を見た、と言っていた。だから、徹夜してでもとことん付き合おうと思ってくれたそうだ。
当日のプレゼンの順番は最後だったので、直前まで資料に手を入れ、ぶつぶつセリフを繰り返していた。他の参加者のプレゼン技術はどれも素晴らしく、最新の映像技術を駆使した資料などもカッコ良かった。正直言って私たちの資料は拙いかもなと思ったりしたが、とにかく魂を伝えたい、それだけにとことんこだわった。
プレゼンはとても緊張した。冒頭は声が震えて会場をしーんとさせてしまった。でも、語りかけるように、来場している数百人の一人一人の目にできるだけ視線を合わせ、絞り出すように心から言葉に思いを乗せた。だんだん会場にいる人が前のめりになってきて、その場が一体になったような暖かさを感じた。制限時間の6分間はあっという間に終わった。
周囲のプレゼンテーションやビジネスモデルがあまりにも素晴らしかったので、優勝できる自信はなかった。でも、やりきった感はあった。審査結果の発表では、なかなか名前が呼ばれなくて、入賞もできなかったのかと諦めかけたとき、最後に社名を呼ばれ、優勝が伝えられた。驚いた。そして思わず嬉しさを爆発させてしまった。
関連記事
- 理想のベビーシッターサービスって何だろう?
「ベビーシッター文化を日本にも広めたい」――。やりたいことは明確に決まっているのだけど、そのイメージを具体的なサービスに落とし込むのは並大抵ではない。私たちのサービスはどのようにして生まれたのだろうか。 - 再び自宅で起業、2回目の挑戦だからこそのこだわりとは?
2度目の起業を決めた私は、同じ思いを共有できる創業メンバーの募集を始めた。そこで思ってもみなかったことが次々と起きたのだ。 - 自ら上場させた会社を辞め、2度目の起業を決意するまで
26歳で初めて創業した会社のビジネスが軌道に乗り、30歳で結婚し、3人の子どもの出産、そして上場。公私ともに順風満帆だった私を、ある日突然、悲劇が襲いました。「何とかするしかない!」。そう心に誓って、困難に立ち向かっていったわけですが……。 - 誰が、次のイーロン・マスクになれるのか
世の中には、先天的にきわめて高い能力を持っている天才児がいる。そんな子どもが、物理学と経営学を学び、1週間100時間のハードワークをこなし、「人類を救う」強い意志を持っていたら、どうなるか。イーロン・マスクになる。 - あなたの会社は? トヨタが踏み切る「配偶者手当の廃止・子ども手当4倍」
トヨタ自動車が配偶者手当を廃止し、子ども手当を4倍に引き上げることで労組と大筋合意したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.