まだまだ未熟な経営者が、大切にしてきた7つのこと:経沢香保子の「ベンチャー魂は消えない」(7/7 ページ)
20代半ばで独立してから今日まで、とにかく必死に走り続けてきた約16年間だった。経営者としてさまざまなことを経験し、そして多くを学んできた。今回はそこで得たことをいくつかお伝えしたい。
(7)出会いを最高のご褒美とする
「周囲にどんな人がいるかが、自分の人生の幸福を左右する」
「自分が成長すればするほど、良い人間関係に恵まれる」
独立してからの16年間、時には困難でも前に進んでこられたのは、自分が社会に対してやりたいことがあったから。それを継続して元気にやってこられたのは、周囲の素晴らしい仲間や経営者の先輩に出会うことができたからだ。
前職時代、子どもを亡くしたり、組織がうまくいかなかったり、大金の個人保証を迫られたりしたのが同時に来たときは、さすがに私も苦しくなって「もう上場目指すのをやめたいです」と、大株主であるサイバーエージェント社長の藤田晋さんに相談しました。すると、たった一言、「そう、大変だったね。でも、一度決めたことはやり遂げた方がいいよ、一生後悔するから」と言って、追加で株を所有して支援を申し出てくれた。
せっかく上場できたのに、前職をやめることになって、半分涙声であいさつに行ったら、「そう、それは大変だったね……」と、私より辛そうな顔をしてくれたこと。でも、その数分後には「まあ、でも、社会とのつながりはもって、いつかまた起業しなよ」と、笑顔で励ましてくれました。
大株主でありながら、長い目で私を見てくれて、一度も怒られたことがなかった。利益とかお金とかではなく、対等に付き合おうと優しく接してくれたので、絶対にこの人を損させたくないという気持ちで頑張れた。
ほかにもたくさんの経営者仲間の一言に何度も救われてきた。どんなことがあっても「私はこの人たちと一緒の空間にいたい」「こんな魅力的な人間になりたい」という思いは、社長業を続ける、起業家でい続ける、私の大きなモチベーションだった。
この人と付き合っていたらメリットがある、儲かるとか儲からないとか、そういう目で相手を見ることを超越した、長期的な関係を尊敬し合える人と構築したいと思う。だからこそ、今まで遠くから学び尊敬していた人とリアルに出会い、本音で向き合える関係になったとき、それは私にとって、人生最大のご褒美だ。
そのために、常に素の自分を高め、相手には隠しごとせず向き合い、そして挑戦したことにはきちんと結果が出せる、向き合ってくれた人たちにとってふさわしい人間でいたいと思う。
次回はついに最終回。経営者として、そしてこれからも起業家として、私自身がどう歩んでいきたいのか、人生の展望についてお話ししたい。どうか最後までお付き合いいただければ。
(つづく)
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