ミニバンやSUVをどう分類するか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
クルマの分類として「BセグSUV」といったセグメントがあるが、旧来のセグメントの枠にミニバンやSUVを一緒くたにしてしまうのはちょっと待ってほしい。
あり得ない対決構図を作り上げないために
これも以前書いたことだが、「排気量、サイズ、価格など、何か1つの物理的なモノサシでセグメントを判断することは難しい。逆に言えば、そう簡単ではないからこそセグメントという別のモノサシを作り出さなくてはならなくなった」のである。プラットフォームを持ってきて、単純にモノサシにしようとするのも全く同じことである。プラットフォームの共用というのはエンジニアリングの舞台裏の話であって、少なくとも普通に商品を選ぶユーザーに対する分類としては全く無意味だ。
しかしながら、舞台の裏方という限られた層にはその見方が有益な場面もある。それは自動車メーカーの人たちだ。Bセグメントを見てみよう。日産にはマーチがあり、マーチベースのSUVにはジュークがある。マツダにはデミオがあり、デミオベースのSUVとしてCX-3がある。これはマーチやデミオというベース車のメカニズムをできる限り流用しながら、いかに違う商品性を持たせた高付加価値のクルマを作るかという商品開発である。
彼らは経営合理性に基づいて、1つのメカニズムからローコストで別の商品を作り出さなくてはならない。そういう商品企画をする側には、各セグメントにどういうベース車両があるかということと、それを発展させて何が作れるかというのは大事なことなのだ。
その意味で言えば、仮にジュークがまともにマーチの競合車になったり、CX-3がデミオの競合車になってしまったとしたら、それは商品企画の失敗だ。自社商品間で競合が起きれば、車種が増えて開発、流通含めて各種コストが増加するわりに実りが少ない。要するに同じメカニズムを使って、違う顧客層にアピールできるからこそ、ビジネス上のパイが拡大できるのだ。
だから、この4台を競合関係に分けるとすれば以下のようになるはずだ。
Bセグメント:マーチ VS デミオ
BセグメントSUV:ジューク VS CX-3
関連記事
- 自動車の「セグメント」とは何か? そのルーツを探る
国内外のメーカーを問わず、自動車を分類ときに使う「セグメント」。そもそもこれが持つ意味や基準とは一体何なのだろうか――。 - Aセグメントのクルマ事情
約100年前にT型フォードが成し遂げた革新によって、クルマは庶民にも手が届く乗り物となった。その偉業は現在の「Aセグメント」にも脈々と受け継がれているのである。 - バブル崩壊が生んだBセグメントの隆盛
バブル崩壊以降の長引く日本経済の低迷によって、消費者の意識は大きく変容してしまった。「いつかはクラウン」と言いながらクルマを何度も買い替える時代は終わり、皆が軽自動車とBセグメントを買い求めるようになった。 - 自動車世界の中心であるCセグメント、しかし浮沈は激しい
フォルクスワーゲンのゴルフが道を切り開いたCセグメントは、世界のメーカー各社がその後を追随し、今では自動車の中心的クラスになった。しかし、これから先はどうなるのだろうか……。 - Dセグメント興亡史
Dセグメントはかつて日本の社会制度の恩恵を受けて成長し、制度改革によって衰亡していった。その歴史を振り返る。 - 混沌から抜け出せぬEセグメント
世の中にあまたあるクルマの中で、Eセグメントと明確に認知されているのはわずか3台しかない。なぜそんなに少ないのだろうか……? - Lセグメント 環境時代のフラッグシップ
Lセグメントにコストパフォーマンスという言葉は似合わない。そのブランドが信じる「最高のクルマ」を具現化することが目的となるからだ。 - 「週刊モータージャーナル」バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.