ミニバンやSUVをどう分類するか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
クルマの分類として「BセグSUV」といったセグメントがあるが、旧来のセグメントの枠にミニバンやSUVを一緒くたにしてしまうのはちょっと待ってほしい。
しばらく前にこの連載でセグメントについての話を書いた。これについて「ミニバンやSUVはどう分類するのか?」という声がある。最近ではそうした車種が増えているので疑問が出るのは当然とも思える。
ただし、旧来のセグメントの枠にミニバンやSUVを一緒くたに入れて考えるのはちょっと待ってほしい。そもそもセグメントとは何のためにあるのかというところから考えないと変な話にしかならないからだ。
ハードウェアに着目した比較に意味はあるのか?
こちらの記事で詳細に説明しているが(関連記事)、セグメントとはそもそも「競合車を横並びで比較するために必要な分類」である。起点はあくまでも選ぶ側、つまりユーザーにある。メディアはユーザーが比較検討するクルマをくくるためにセグメントに注目するのだし、メーカーは競合他車より優れた製品を作るためにセグメントでの比較を行いながらクルマを作る。
ところが、このユーザー起点の考え方を見逃すと、ハードウェアに着目した比較が始まってしまう。自動車マニアにありがちな本末転倒だ。仮にこうしたハードウェア=プラットフォームを起点に、ミニバンもSUVも全部同じセグメントという枠で考えると何が起きるだろうか?
例えば、トヨタのノアは5ナンバー枠のミニバンだから、プラットフォームを基準に考えればDセグメントになる。以前の連載で書いた通り(関連記事)、グローバルなDセグメントのベンチマークはベンツのCクラスとBMWの3シリーズである。
ハードウェアに固執するなら、極端な話、BMW M3とトヨタ・ノアはライバルということになってしまう。それはどう考えてもおかしい。この2台はどういう見地から見ても別のジャンルになるはずだ。逆に問いたいが、これを同類とする区分け方に一体何の意味があるだろうか? 例えば、「BMW M3とトヨタ・ノア、どちらが買いか?」という雑誌の特集を想像できるだろうか?
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