「お客様第一」がスローガンの会社は、なぜ「お客様第一」でないのか:こだわりバカ(3/5 ページ)
企業の経営理念やスローガンを調べてみると、「お客様第一」をよく目にする。しかし、そうした企業は本当に「お客様第一」を実践しているのだろうか。「実践できていない」理由について、筆者の川上徹也氏は……。
経営理念を「お題目」にしないための3カ条
「言行不一致コピー」は、「お客様第一」に限らない。「地域密着」「社会貢献」「社員の幸せ」などもその代表だろう。断言してもいいが、「地域密着」を旗印に掲げている企業で、本当の意味で「地域密着」ができている会社はほとんどない。「社会貢献」や「社員の幸せ」なども同様だ。余程の覚悟がないと掲げてはいけない言葉だろう。
他にも川上コピーでよく見られるのは「お客様の笑顔」「地球環境」「卓越した技術」「未来」「創造」「イノベーション」などの空気コピーである。
このようなありきたりな言葉でできている経営理念やスローガンは、いくら社長室の額に入れて飾ろうと、朝礼で唱和しようと、クレドカード(企業理念などが書かれているカード)にして配ろうと、お経や念仏と同じ。社員にその理念が浸透していくことはない。当然、お客さんにも伝わらない。やがて形骸化していく運命をたどるのだ。
では、どうすれば、社内外に浸透していく経営理念や企業スローガンを作ることができるだろう? 以下の3カ条に注意するだけでも、大きく違ってくるはずだ。
経営理念を「お題目」にしないための3カ条
(1)短く、やさしく、覚えやすい言葉で
(2)その会社ならではの哲学を感じる
(3)羅針盤になる1行にする。
順番に見ていこう。
(1)短く、やさしく、覚えやすい言葉で
経営理念というと、難しくかたい言葉を使わなければならないと思っていないだろうか? 実際は、短く、やさしく、覚えやすい言葉を使ったほうが圧倒的に伝わりやすく、浸透しやすくなるのだ。
(2)その会社ならではの哲学を感じる
せっかくの経営理念がお題目になってしまうのは、どこの会社が掲げてもいいような1行になっていることが大きな原因だ。
社内外に浸透していき、経営の旗印になる1行にするには、何よりもその会社ならではの「哲学」を感じるフレーズにする必要がある。
(3)羅針盤になる1行にする。
経営理念は、社長が経営判断をするのに迷ったとき、社員が行動に迷ったときなどに、そのフレーズを見て「道はこっちだ」と方向を示してくれる羅針盤になるような1行であるのが理想である。
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