「お客様第一」がスローガンの会社は、なぜ「お客様第一」でないのか:こだわりバカ(4/5 ページ)
企業の経営理念やスローガンを調べてみると、「お客様第一」をよく目にする。しかし、そうした企業は本当に「お客様第一」を実践しているのだろうか。「実践できていない」理由について、筆者の川上徹也氏は……。
グーグルが掲げる10の事実とは?
上記の3カ条をすべて満たしている経営理念の例をみてみよう。検索エンジンなどで知られるグーグルは、経営理念にあたる「10の真実」を会社情報ページに掲載している。いずれも短く、やさしく、覚えやすいフレーズだが、グーグルならではの哲学を感じ、羅針盤になりうる優れた1行になっている。以下、引用する。
グーグルが掲げる10の事実
(1)ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
(Focus on the user and all else will follow.)
(2)一つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
(It's best to do one thing really, really well.)
(3)遅いより速いほうがいい。
(Fast is better than slow.)
(4)Webでも民主主義は機能する。
(Democracy on the web works.)
(5)情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
(You don't need to be at your desk to need an answer.)
(6)悪事を働かなくてもお金は稼げる。
(You can make money without doing evil.)
(7)世の中にはまだまだ情報があふれている。
(There's always more information out there.)
(8)情報のニーズはすべての国境を越える。
(The need for information crosses all borders.)
(9)スーツがなくても真剣に仕事はできる。
(You can be serious without a suit.)
(10)「すばらしい」では足りない。
(Great just isn't good enough.)
いかがだろう? 原文の英語で読んでも、日本の中学生でも理解できるようなやさしい文章で書かれていることが分かるだろう。にもかかわらず、哲学を感じ、羅針盤になる1行になっているのだ。
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