「下流老人」「老後破産」報道の正しい受け取り方:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「下流老人」「老後破産」といった言葉をよく目にするが、こうしたネガティブなワードを私たちはどのように受け止めればいいのか。筆者の窪田氏は……。
「格差是正」や「富の再分配」の必要性を訴えるために
では、そんな高度なテクニックを駆使してまで、藤田氏はいったいなにを「提起」したかったのか。先のインタビューには、下流老人の増加を食い止めるため、「税率の高い北欧型にするのは無理だとしても、ドイツやフランス、オランダあたりをめざしたい」という目標とともに、「高所得者層の負担が軽い」という問題を指摘されている。
貧困や生活保護などを長く研究されている首都大学東京の阿部彩教授は「下流老人ブーム」について、『高齢期の貧困のリスクは以前から存在するものであり、貧困を研究している筆者のような身からすれば、「何を今更」という感が否めない』(週刊東洋経済:2015年9月12日)と首を傾げたが、「高福祉国家」や「富の再分配」という政策提言を行うための「世論づくり」だと考えればすべて辻つまが合う。
ただ、その一方で「下流老人」「老後破産」という言葉だけがメディアによってセンセーショナルに切り取られていることで、「政策提言」という本来の目的から大きく逸脱してしまっている。
電車内に中吊り広告でご覧になった方もいるだろうが、2月号の『WEDGE』では、『「下流老人」のウソ』と表紙にデカデカとうち、貧困率が悪化しているのはむしろ若年層だという厚生労働省の「相対的貧困率に関する調査分析結果」(2015年12月)を引っ張り出して、「老後リスク論」は幻想として、景気回復に水を差しているとバッサリやっている。
相対的貧困率が多少改善されていても、高齢者数自体が右肩上がりの今、「貧困にあえぐ老人」という現象が増加傾向にあるのは間違いないので、「ウソ」呼ばわりは藤田氏にしても不本意だろう。
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