リンガーハットが、24億円の最終赤字から「復活」できた理由(2/3 ページ)
「長崎ちゃんぽん」でおなじみのリンガーハットが好調だ。今期の業績予想は売上高395億円と、6期連続の増収を見込んでいる。そんな同社だが、実は過去10年間で4度の最終赤字を計上しているのだ。そこからどのような復活劇を遂げたのだろうか?
復活劇を導いた「国産野菜100%」
リンガーハットは創業から順風満帆に成長を続けてきたわけではない。2000年代前半から後半にかけて苦しい時期を経験し、過去10年の間に4度も最終赤字を計上していたのである。
外食業界全体で繰り広げられた低価格競争にリンガーハットも巻き込まれた。価格を下げるために人件費を削る、そうすることでサービスの質が低下するという負のスパイラルは、後にブランド力の低下という大きな代償を払った。ついに2009年2月期通期には、純損失24億3400万円と過去最大の赤字を計上したのだ。そんなどん底の状態から、リンガーハットはどうやって抜け出したのか。
その大きな取り組みの1つが、顧客満足度アップに向けた「国産野菜100%」プロジェクトである。どん底状態に陥っていた2009年10月、全店舗において使用するすべての野菜を国産に切り替えるという大胆な試みを実施。その1年前から15道県・約40産地の農家と連携して、野菜を国内調達、商品化し、全流通できるまでのシステムを整備していたのである。ちょうどそのころ、顧客の志向は、価格重視から健康志向への変化が見られ、リンガーハットの戦略はこのトレンドにうまく乗ることができたのだ。
先述した野菜たっぷりちゃんぽんには、国産野菜を480グラムも使用している。しかも、使用する野菜の栽培段階からリンガーハットがかかわり、化学肥料をできる限り減らした契約栽培の野菜のみを使用するというこだわりぶりだ。
2013年には、麺やぎょうざに使用する小麦粉も全て国産にした。加えて、主力商品である「長崎ちゃんぽん類」「長崎皿うどん類」「チャーハン」「ぎょうざ」に至っては、保存料・合成着色料の使用も全て排除した。消費者の健康志向がさらに高まる中、安心・安全なイメージの強い「国産野菜100%使用」というメッセージが、再びリンガーハットへ行ってみようと思わせる来店動機となったのだ。
健康志向に対するリンガーハットの取り組みはこれだけでは終わらない。数年前からブームになっている「糖質ダイエット」にもうまく適応した。野菜たっぷりちゃんぽんから麺を抜いた「野菜たっぷり食べるスープ」を2015年4月から販売スタートしたのである。きっかけは、糖質ダイエットブームで「麺ナシ」をオーダーする顧客が増えたこと。ラーメン屋で麺ナシはなかなか聞かないが、480グラムもの野菜が入っているため、それだけで十分に満足度が高いのだという。
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