コンビニで「食品ロス」が絶対になくならない理由:コンビニ探偵! 調査報告書(4/4 ページ)
ココイチのビーフカツ横流し問題を受け、食品廃棄に関するニュースが増えてきたように思う。毎日のように食品を廃棄しているコンビニ関係者にとっても気になるところだろう。今回は、コンビニの食品廃棄の現状とその問題点について考察したい。
廃棄ロスは“織り込み済み”
もう1つの設計とは、損益計算の設計である。つまり、コンビニの食品廃棄はもともと計画されているということだ。
店舗を運営するにあたり、売り上げ、原価、人件費、利益など、考える要素はいくつかある。まず、売り上げ。これは立地条件や店舗の規模などに左右されることもあり、店によってまちまち。売り上げの中から人件費、その他必要経費などが引かれ、利益となる。その計画内に、当然あるべき経費として廃棄ロスが組み込まれているのだ。
そして、その廃棄ロスの金額が一定量に達しない店舗は、本部からは「売り上げを伸ばしたくないと考えている店」と烙印(らくいん)を押されてしまう。
商品の発注納品計画をきちんと実行すれば廃棄ロスは減っていくはずだが、発注の精度にかかわらず、損益計画では廃棄ロスの予算がすでに決められているのだ。本部は本当に食品廃棄を減らそうと考えているのだろうか。実に不可思議な考え方である。
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法案が成立した。本部が「売り切れることが悪」と考えており以上、フランスのような法整備をしたところでコンビニの廃棄問題は絶対に解決しない。また、その考えを忠実に守れば守るほど、関係者の多くは「この仕組みはよくないよ、なんとかしようよ」と思っていてもなんとかならない話なのである。
著者プロフィール・川乃もりや:
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
関連記事
- もう振込用紙を持って来ないで! コンビニが「収納代行」を止めたい理由
「電気・水道・ガス・電話などの利用料金はコンビニで振り込んでいる」という人も多いだろう。しかしこの「収納代行」……とにかく面倒で、コンビニオーナーだけでなく本部も「止めたい」と思っているのではないだろうか。 - ココイチのカツ横流し事件、産廃業者の「ひとりでやった」が信用できない理由
ココイチの「カツ横流し事件」が世間を騒がせている。今回の不正は、産廃業者ダイコーによる“単独犯”ということになっているが、筆者の窪田氏は「『ひとりでやった』というのは信じられない」と指摘している。なぜなら……。 - フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由
フランスで「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立した。世界で類を見ない画期的な法律であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。課題もたくさんあるが、フランスのこの取り組みは日本でも参考になるのではないだろうか。 - えっ、完売したらいけない? コンビニの物流がスゴくなった理由
読者のみなさんは、コンビニに商品が入る時間をご存じだろうか。多くは深夜だが、消費期限の短い弁当やおにぎりなどは1日3回に分けて納品される。実は、これにはいくつかの「思い」があったのだ。 - なぜ「ゴキブリ1匹」でペヤングは消えたのか
「ペヤングからゴキブリ出てきた」というクレームを受け、まるか食品が全商品の生産中止に踏み切った。同時期に、日清食品でも同じような騒動あったのにもかかわらず、大きな問題に発展しなかった。なぜまるか食品ばかり叩かれるのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.