コンビニで「食品ロス」が絶対になくならない理由:コンビニ探偵! 調査報告書(3/4 ページ)
ココイチのビーフカツ横流し問題を受け、食品廃棄に関するニュースが増えてきたように思う。毎日のように食品を廃棄しているコンビニ関係者にとっても気になるところだろう。今回は、コンビニの食品廃棄の現状とその問題点について考察したい。
コンビニが食品の廃棄を減らせないワケ
コンビニの弁当やおにぎりなどの食品は、1日に3回納品される。小分けに納品することで廃棄を減らせるのでは? と思われたかもしれないが、実は小分けに納品しても廃棄量はあまり関係ない。店舗が食品の廃棄を減らせないワケは別にあるからだ。以下の図を見ていただきたい。
分かりづらいかもしれないので少し説明しよう。当然のことながら、店側は納品のタイミングに合わせて在庫を売り切ることで「廃棄ロス」を減らしたいと思っている。
ところが、本部の考える「ロス」は、店舗の考えとは少し違う。以前、「えっ、完売したらいけない? コンビニの物流がスゴくなった理由」という記事の中で、コンビニの廃棄ロスとチャンスロスについて述べた。本部は「在庫がない=販売のチャンスを逃している」という考えなので、常時、店舗に十分な在庫がある状態をキープしたいのだ。確かに、この考えでも計画通りに売れれば問題はない。
しかし、実際はどうかというと、新しい弁当が入ってくれば新しい弁当から売れるという現象が起きる。食べ物はできるだけ新しいモノを買いたい。消費者なら自然に働く心理だ。このように、売れる順番が変わればその分だけ廃棄処分される。
コンビニの弁当廃棄問題に関する記事などで、「発注の精度を上げるために最善の努力をする」という本部の回答を見かけることがある。ただし、コンビニの食品廃棄においては、発注の精度に問題があるのではなく“見せる在庫”に根深い問題が潜んでいるのだ。
多くのコンビニチェーンでは、朝、昼、夜という来店客数のピークに合わせてたくさんの商品があるように納品時間が設定されている。それがいつしか、「いつでもたくさんあるように」と変化してしまったのだ。
なぜこんなことになってしまったのだろうか。答えは「お客さんの要望があるから」だ。その要望に応える形で販売時間が設計されている。しかし「廃棄が出ない設計」とうたう一方で、廃棄金額が減ると、今度は「発注が足りてない。チャンスロスが発生している」と本部は言う。
この結果、オーナーはしぶしぶ注文を増やさざるを得ない現実があるのだ。このままでは、廃棄ロスが減ることは絶対にない。廃棄を減らしたいのに減らせない……あまりに矛盾していると思うが、実はこの問題にはもう1つの発注設計が関わっているのだ。
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