社員以上の愛社精神を持つ、ヤッホーファンが流した涙のわけ:「よなよなエール」流 ガチンコ経営(3/4 ページ)
私たちヤッホーブルーイングでは「よなよなエール」などを愛飲してくれるお客さんのことをファンと呼んでいます。今回は熱心なファンの一人、ゆみえさんとの間に生まれたあるエピソードをお届けします。
涙を流したわけ
そして次の日の朝のことです。出社していつものように届いているメールに目を通していると、ゆみえさんからメールが届いていました。昨夜遅くに書いたそのメールはとても、とても長いもので、しかも信じられないような内容が書かれていたのです。
「最後に皆さんが車に乗り込んでお帰りになる姿を見えなくなるまで見送っているうちに、涙が溢れて止まらなくなってしまいました。店長(私のこと)を含めて大の大人5人が、荷物で一杯のワゴン車にギュウギュウ詰めで乗り込み、汗だくの明るい笑顔で私に一生懸命手を振っている姿を見たら急に悲しくなって涙が出てきたのです。
皆さんをせめてもっと大きな車に乗せて、ゆったりと帰してあげたかった……。イベントも自分たちで準備し、片付け、搬出もした上で、次の仕事が待っているからと、のんびりもできない……。小さな会社なのでそれは仕方がないことかもしれませんが、何かそんな状況が勝手に悲しく思えたのです。私たちファンが、もっとよなよなエールを飲んで、そして世に広めていけば、少しは皆さんの会社も余裕ができて、もっと大きな車も買えるだろうと思うと申し訳なくて……。私が頑張って皆さんに新しい車を買えるようにしてみせます。もっともっと応援しますから!」
このメールを読みながら、私は号泣しました。どこの世界にファンが会社の営業車が小さくて悲しいと言ってくれるでしょうか? もう少し大きな車を買えるように商品を広めて応援しようとするでしょうか? 親身になって涙を流してくれるでしょうか?
私たちはファンにビールを買ってもらうだけでもありがたいと感謝しています。それだけでなく「おいしいよ!」「応援しているよ!」と言われると、よなよなエールを造り続けることの大きな意義を感じ、感動しています。その上さらに、涙を流して私たちのことをこんなに思ってくれるなんて本当に信じられないことです。うちの社員ですら、私たちがイベント時に窮屈に乗っている車を大きくしてやりたいという気持ちはさほどないでしょうし(これは別に悪い意味ではありません)、当然そんなことで涙は流しません。
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