2015年7月27日以前の記事
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星野リゾートの青森エリアが挑む「冬」との戦い(2/5 ページ)

いよいよ東京のど真ん中に「星のや」をオープンする星野リゾート。これまでさまざまなホテルや旅館を再生してきた同社は、現在国内外で35施設を運営する。今回はそのうち3施設を展開する青森県での取り組みを追った。

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観光客は増加傾向、訪日外国人も

 その前に青森の観光産業事情を見てみよう。

 青森県の観光客推移は、ここ数年増加傾向にあり、2014年度は対前年比2.4%増の3396万1000人だった。観光消費総額は同1.1%増の1493億2100万円、費目別では宿泊費が同6.1%の503億2100万円となった。2014年には青森空港にANA(全日本空輸)が就航したことが追い風となった。

観光入込客数(のべ人数)の推移(出典:青森県観光国際戦略局)
観光入込客数(のべ人数)の推移(出典:青森県観光国際戦略局

 全体の底上げとともに、海外からの観光客数も伸びている。そのけん引役の一人として県内の関係者が口をそろえて名前を挙げるのが三村申吾・青森県知事である。三村氏は韓国、台湾、中国、香港を重点エリアに位置付け、観光PRを自ら積極的に行うことでインバウンド需要を取り込んでいる。その成果は着実に表れていて、2015年1〜11月に青森県内に宿泊した外国人は10万人を超え、過去最高を記録した。

 一方で、国内に目を転じると、今年3月の北海道新幹線の開通が、青森の観光にとっても大きなチャンスになると見られている。例えば、まずは飛行機で北海道に入り、新幹線で青森を経由して、仙台まで行き、そこから再び飛行機でといった周遊型の旅行が増えるとみている。また函館と青森の行き来が便利になったことから、北海道からの観光客の需要も期待できる。単なる通過地点ではなく、いかにして青森を乗客にアピールできるか躍起になっているのだ。

新青森駅に停まる北海道新幹線。終点の函館北斗駅までは約1時間という距離だ
新青森駅に停まる北海道新幹線。終点の函館北斗駅までは約1時間という距離だ

 そうした外的要因に加えて、旅行者そのものの行動にも変化が見られる。かつては団体旅行で青森を訪れる人が多かったが、今は個人旅行の比率が高まっている。例えば、近年は、青森県立美術館や十和田市現代美術館を相次いで開館していることから、芸術に関心のある若者がやって来る機会が増えている。

界 津軽の於保孝志総支配人
界 津軽の於保孝志総支配人

 ただし、青森は他地域と比べて観光で不利な面がある。それは冬。ご存じの通り、国内有数の豪雪地帯で、県庁所在地の青森市は年間降雪量で全国トップの常連。このことが与える影響は特に交通機関に顕著で、国内外からの飛行機の離着陸や、ローカルバスなどにもかかわってくる。

 星野リゾートの施設でそのあおりを食らっているのが、奥入瀬渓流ホテルだ。冬になると奥入瀬から八甲田山の方につながるバスがなくなるため、観光が途切れてしまい、同ホテルは冬期の休業を余儀なくされている。例年11月末から翌4月中旬まで実に5カ月近くが休館となるのだ。「通期運営が喫緊の課題」と、奥入瀬渓流ホテルの宮越俊輔総支配人は語った。

 青森屋、界 津軽は通期で開業しているものの、運営開始時には同様に冬期の集客が課題だったという。そうした中で冬期の数字をどう数字を伸ばすか、あるいは冬期のマイナス分をほかでどう補うのか、それが年間の売上高に直結するのは説明するまでもない。各施設はこの課題に対してどのように向き合っているのだろうか。

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